第1章 夢野幻太郎が運命論者になるまで
奇跡を信じたいから運命は信じない。
つまりは人間とは兎角勝手な生き物で
悪い結果を信じたくないが為に
奇跡が起こるように願い、
良い結果が出るとそれをたちまち手のひらを返したかの様に
運命と宣うのだ。
そんな人間のさまざまな行動を観察してきた幻太郎は
運命に踊らされる人間たちにとても興味が湧いていた。
路上ライブをしてるシンガーソングライターが観客に対し、出会えた運命と語る。
若いカップルが夢物語のように「うちらは幸せになる運命なんだよ」
とプロポーズまがいなことを囁いている。
乱用される運命という言葉に
どんな味がするのだろうかと
飴を舐めてる乱数の顔が浮かんだ。
ふむ。と一人頷き乱数の事務所に向かう。
身を焦がすほどの思い。乱数はしたことがあるのだろうか。運命の味も分からない小生にも
ハウトゥー本の如く分かりやすく教えてくれるのだろうか。
幻太郎はどうやら執筆に行き詰まっている様子だ。
そして結果。家に帰る頃にはすっかり運命論信者の仲間入りしていた。