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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第2章 はじまり


「VC103221」

ぴくりとネズミが反応を示す。
紫苑の言った言葉にユキが首を傾げた。

「ほらユキ、VCというのは…」
「分かってる。なんでネズミが凶悪犯罪者なのかなって」

ちらりと見るが、ネズミは答える気はなさそうだった。

「液晶画面に大写しだった。有名人だな」
「実物の方がずっといいだろう?」
「ネズミは綺麗だよ」
「そうだね、ネズミは綺麗だよね」

恥ずかしげも無く言ってのけたユキに同意する紫苑。
2人を見ながらネズミが小さくため息をついた。

「それよりどうやって逃げるんだ?」

市民登録していない者は不法侵入者として厳重にチェックされる。
そのシステムが市内中に張り巡らされているのだ。

「逃げ切れるわけ無いだろ」
「どうかな」

ネズミから鋭い眼差しが向けられた。

「あんたたちは穴だらけのニセモノの街を理想都市だと思い込まされてるだけだ」
「…思ってないよ」

ポツリと呟いた紫苑の声が聞こえなかったのか、ネズミがえ?と聞き返した。
じっ…とネズミを見つめながら、紫苑が今度ははっきりと口にした。

「ここが理想的な街だなんて思ってない」

驚きに目を見開いたネズミ。
ユキも紫苑と同意見のようで、こくりと頷いた。

「あんたたち、ほんと変わってるな」

こんなところに住むようなエリートが言う事じゃない。
それにVCを匿って当局への連絡を怠った。

「ばれたら、やばいなんてもんじゃすまないぞ」
「うん、かなりヤバイ」

だいじょうぶかよ!とネズミが本気で心配してるのを見て、紫苑とユキが呆気にとられた。

「あんたらがどうなろうとおれには関係ないけど、おれのせいであんたらが破滅しちゃったら困る…なんかすげぇ悪いことしたみたいで…」
「義理堅いんだ」
「ネズミ、優しいね」

「他人に迷惑かけちゃいけませんってママから教育受けたんだよ」
「じゃぁ出てく?」
「うっ…それはやだなぁ…台風だし寝たいし」
「矛盾してるよ」
「建て前と本音を使い分けろってパパが…」

そんな事を話しながら3人は小さく笑った。

「ネズミ。君はどうやってクロノスまでやって来た?」
「…ないしょ」

言えない?と聞いてくる紫苑から逃げるようにネズミが布団を被る。
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