• テキストサイズ

白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第2章 はじまり


そう言った紫苑にネズミがふーんと返した。

紫苑がクローゼットから服を取り出してネズミへと渡す。

「本当に眠ってもいい?」
「「いいよ」」
「ありがとう、紫苑、ユキ」

紫苑が嬉しそうに笑いながら、部屋を出ていった。

「ユキは行かないのか?」
「紫苑が部屋に夕食持ってきてくれると思う」

ユキがベッドの縁に座った。
それを見てネズミが少し言いにくそうに口を開く。

「…着替えたいんだけど」
「分かった。見ないよ」

ボフッとうつ伏せに寝転んでユキがベッドへ顔を埋めた。
着替え終わったネズミが、寝転んでいるユキを見る。

さっきハサミを向けられた時、気配が全く感じられなかった。

「ネズミ?もういい?」

動く気配が無くなったからかユキがくぐもった声でネズミを呼ぶ。
悪戯心が湧いて、ネズミはユキの背中に右膝で乗り上げて、左腕を捻り上げた。
驚いて体を起こそうとしたユキだったが、ネズミの体重が乗せられていて上手く動けない。
少しだけ顔をネズミに向けたが、そのまま手で口を塞がれる。

「………?」
「さっきの仕返し」

何でこんなことを?と言いたげな視線にネズミが答えると、ユキがこくりと頷いた。
それにしても、ユキの反応が薄い。
体を押さえつけた時には反射的に驚いていたふうではあったが、すぐに落ち着きを取り戻した。
冷静なのか、それとも…。

「何してるの?2人とも」

ネズミが思考を巡らせていると、紫苑が夕食を片手にきょとんとした表情で立っていた。
ユキを押さえつけたままだったのを思い出して、やりすぎたと謝るネズミ。
なんともないと首を振ったユキを見ながら、紫苑がネズミへ夕食を渡す。

「ネズミはそれ食べていいからな。ユキはぼくと分けよう」
「うん」

いただきます、と言ってから、3人は夕食を食べ始めた。
美味しい…と呟いたネズミに、そうだろと嬉しそうに紫苑が言う。

「火藍ママ、料理上手なの」

ユキの言葉にネズミもそうなのかと頷いた。
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp