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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第2章 はじまり


「一度聞いた事を忘れる事ができるか?聞かなかったことにできるか?できないだろ?なら聞くな」

首を突っ込むなと、ネズミは言いたいのだろう。

そのかわりおれもぜったいしゃべらない。
なんの事だと紫苑が聞く。

「あんたが窓開けて大声出してたこと」

カァッと紫苑の顔が熱くなる。
そのまま茶化してくるネズミに反論して襲いかかろうとすれば、逆に紫苑がベッドへ組み敷かれた。

カチャリと首元へスプーンが当てられた。

「これがナイフなら…あんた即死だぜ」

ニヤリと笑ったネズミに、紫苑はまたキラキラとした目を向けた。
次いで出てきた言葉にネズミは拍子抜けする。

「すごいな!どうやったらこんなに簡単に人の身体が動かなくなるわけ?押さえる神経の場所とかあるの?」
「……。あんた、本当におかしい…ぜったい天然だ」

ボフッとネズミが紫苑に覆い被さると更にネズミの上から重みが加わった。

「ユキ…あんた何してんの」
「2人だけ楽しそうでずるい、わたしも混ぜて」
「ユキ、ネズミケガしてるから乗っちゃ駄目だよ!」

ギューッとネズミの背中に抱きついているユキを優しく引き剥がそうとする紫苑。
しかしなかなか離さないのでネズミはそのまま紫苑の隣へ転がった。
つられてユキもそのままネズミの隣へと転がる。

ギュッと3人が手を繋いだ。
と、ユキが気付いたように、体を起こして自分の額をネズミの額にコツンと当てる。

「ネズミ、熱い」
「発熱?抗生物質飲んだ方がいい」
「いいよ…もう眠たい」
「わっ」

額をくっつけていたユキの体をネズミが左手でそのまま引き寄せる。

「生きてる人間って、温かいんだ…」

ネズミの両手に力が入った。
紫苑は握られた右手を見ながら、ユキは抱きしめられたまま…。

3人は深い眠りへと落ちていった。

そして次の日の朝。

ネズミは部屋から消えていた。
紫苑があげたチェックのシャツと、救急ケースとそして。
こっそりとユキがネズミの手首につけた青いビーズのブレスレット共に…。

それが3人が出会った、4年前の出来事である。
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