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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第2章 はじまり


9月7日。
今日は紫苑の12回目の誕生日だった。
生憎と外は台風で大荒れ。

『紫苑、窓開けたりしないでよ、台風が来てるし、ユキの事もあるんだから』
「分かってるよ母さん」

ユキも外に出ちゃだめよと火藍に注意される。
うん、と返事を返してユキは紫苑を見た。
明らかに台風に興味津々な様子だ。

自然も動物もヒトも管理された空間。
それが今日はこんなにも荒れていて…

最高のプレゼントだ!と喜ぶ紫苑を見て、ユキが口を開いた。

「窓開けたい?」
「開けたい!!少しだけいい?」
「いいよ、紫苑の誕生日だから」

この荒れ具合だとあまり意味がないかもしれないが、ユキは頭からフードマントを被る。
それを確認した紫苑がそっと窓を開けた。

ブワッッと風が入り込み、机の上にあった紙が飛ばされた。
少しだけ開ける予定だったはずの紫苑は、いつしか窓を全開にしてベランダへ出ていた。

「ウアアアアアアア!!!!!」

大きく手を広げて、紫苑が叫ぶ。
よっぽど楽しいのかと思いながら、なるべくユキは雨風の当たらない奥にいた。

紫苑が満足するまで見守っていようとしたその時、警報がなった。

『室内環境が悪化しました。10秒後に窓をロックします』
「環境管理システムか」

聞こえてきたアナウンスに紫苑がシステム切りに一旦部屋に戻ってきた。
ユキがそれを見ていると、視界の端に何かが映り込む。

気配を感じ、振り返った紫苑とユキが見たのは1人の少年の姿だった。

左肩から血を流しているのを見て、紫苑が慌てたように手を伸ばす。

だが次の瞬間、少年の姿はそこにはなかった。
ガッと紫苑は首を掴まれ、壁に押し付けられた。
苦しみに喘ぎながら、紫苑が声を絞り出す。

「待っ…て!!ユキっ!!」

その言葉に少年がハッとした時には、ユキがハサミを少年の喉元へ突き付けているところだった。
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