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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


ユキはガタガタと体を震わせながらただ見ていることしかできなかった。



「ふぅ…終わった…」

カタン、とメスを置いて汗を拭うネズミ。
紫苑に声をかけるが、反応が薄い。

「眠たい…」
「今はまだ眠るな、我慢しろ」

頼むから目を開けろと、ペチペチとネズミが紫苑の頬を叩く。
しかし紫苑の目は開く事なく、小さく呟きが漏れた。

「もういい………。逝かせてくれ………」

その言葉にネズミがカッとなって叫ぶ。

「ふざけんな!そんなかんたんに逝かれてたまるかよ!人に散々苦労させといてあっさり一人で逝くな!」

ママが泣くぞ!あの子はどうすんだ!

「それにっ…ユキは!!」
「紫苑……死んじゃうの………?」

ハッとネズミが振り返る。
今まで怯えたようにして膝を抱えていたユキがゆっくりと紫苑に近づいてきた。
瞳にはたくさんの涙が浮かんでいる。

「いや…いやっ!紫苑、死んじゃいやぁ!!」

また私は、ひとりぼっちになっちゃう…。
ユキの言葉にネズミがどういう意味だ?と考えたその時だった。

ふわりとユキの周りに水が浮かび上がる。

「ユキ…!?」
「『ユラリユルレリ 泡沫 想い 廻る秤…伝う水脈 その手が拓く 明日は』」

歌…?
ネズミが驚きに目を見開いた。
ユキが歌うように言葉を紡ぐと、周りの水が呼応しているかのように踊り舞う。
そうしてゆっくりと紫苑を包み込んでいった。

「………ユキ…?」

紫苑が目を開ける。
ハッとしたネズミが、そのまま眠るなと言って立ち上がってどこかへ駆けていく。

「ユキ…ごめん…。もう大丈夫だから…とめて?」
「し、おん…」

紫苑が泣いているユキの頬を優しく撫でると、水は小さな音を立ててその場から消えた。



ネズミが持ってきた水を飲み、なんとか峠を超えたであろう紫苑は眠りについた。
紫苑の手をずっと握って離さないユキは、未だに涙が収まらない。
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