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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


「ユキ」
「……?」

弱々しく振り返ったユキに、ネズミは大丈夫だと強い視線を向ける。
少しの間を置いてこくりと頷いたユキは、ごしごしと乱暴に涙を拭った。

「おいおい、強く擦るな」

ちょっと待ってろ、とネズミが立ち上がってどこかへ歩いていく。
なんだろうと首を傾げてユキは待っていたが。
やがて手にタオルを持ったネズミが戻ってきた。
そしてタオルを手渡す。

「あったかい…」
「目、真っ赤だからな。それ当てておけ」

うん、と素直にタオルを目に被せる。
そんなユキの様子を見ながら、ネズミは先程の事を聞くか迷っていた。
今ユキの心はかなり弱っているだろう。
ただでさえ、水を被ると色が変わる髪と目の事でも、ネズミの反応に怯えていたのだ。
そんな状態のユキに、質問攻めをしようとする気が起きない。

「…ユキ、こっち来い」
「………?」

一度タオルを目から外して、ユキはネズミの方を見る。
ソファに座っているネズミが手招きをしていたので、ユキは近寄っていった。
と、ネズミがユキの腕を引っ張る。

バランスを崩したユキを抱えながら、ネズミはソファに寝転んだ。

「ネズミ?」
「あんた…ホント小さいし細っこいな…この4年ちゃんと食べてたのか?」

腕の中から見上げてくるユキにそう聞くと、ユキはこくりと頷いた。

「火藍ママの料理は美味しい」
「ま、確かにそうだったな」

とりあえず寝るぞ、と言ったネズミに、ユキは少しだけ戸惑いを見せる。
一緒に寝るの?と聞いてきたユキに、ネズミは特に気にした様子もなく言った。

「4年前もこうして一緒に寝ただろ?」
「うん…そうだけど」
「…今は離したくないんだよ、」

分かれ、と言ってネズミが目を瞑る。
一瞬、驚いたように目を見開いたユキだったが、小さくありがとうと呟いて、ゆっくり目を閉じた。

元々床で寝かせる気もなかったが、ユキはあのままだと紫苑の傍でずっと起きていた事だろう。
また1人になってしまうと言っていた。

涙を流したユキに、ネズミは傍にいてやりたいとただ漠然と思った。
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