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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


「きみは何故他人のぼくたちを助けた?危険地帯に踏み込んでまで…言ってる事とやってる事が違う」

あんた…ほんとに嫌な性格だな。
紫苑の言葉に、ネズミがきつく睨み返し、紫苑の胸倉をつかんで本棚へと押し付けた。
慌てたようにしてユキが立ち上がり、ネズミの手を掴む。

「あんたたちには借りがある。4年前命を助けてもらった。その借りを返す、それだけだ」

冷めた言い方に、ユキが少しだけ悲しそうな表情をしたが、2人は気付いていない。
ならもう充分だ、手を離せとネズミに言うが、ネズミは自分で離してみろと挑発している。

「鼻に噛み付くぞ」
「えっ…!」

カチッと歯を閉じて音を鳴らし、両手を伸ばす紫苑。
驚いたネズミが咄嗟に手を引こうとすると、ネズミの手を掴んでいたユキが急に引っ張られバランスを崩す。

「「ユキ!」」

支えようと手を伸ばした2人もろとも、3人は床に転んだ。
ついでに周りにあった本の束も崩れた。

「最悪…ユキ、紫苑、大丈夫か?」
「頭痛い…」
「本にぶつけたのか!?大丈夫!?ユキ!?」

心配そうに声をかけてきた紫苑に、大丈夫とこくりと頷いた。
ふと、ユキが倒れた拍子に掴んだ本を見つめた。

「ヘッセの詩集だよ」

詩を詠うネズミ。
その姿にユキが見惚れていると、ネズミと目が合う。
しかし合ったのは一瞬で、詠い終わると知ってる?と問いかけてきた。

「知らない」
「だろうな」

ユキは?と聞こうと振り向いた紫苑だったが、ユキの視線は紫苑の腕に向けられている。
次の言葉を聞いて、紫苑は絶望した。

「紫苑、その痣みたいなの、なあに?」

ハッとして袖を捲くる。

「なに…。なんだよ、これ…!まさか…!」

ズキン、と紫苑に頭に激痛が走った。
同時に紫苑が叫び出す。

「うわあああああああ!!!!」
「紫苑!?どうしたの!?」
「あがっ…!あああっ!!!」
「待ってろ、すぐ医者を…!」

立ち上がったネズミの腕を、紫苑が掴む。
どうしたらいいと聞くネズミに、紫苑は首の水ぶくれを切開してくれと頼んだ。
麻酔も無くてもいいという紫苑を見て、ネズミが覚悟を決める。

叫ぶ紫苑、紫苑の首を切るネズミ。
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