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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


暫くして、紫苑がシャワーを終えて戻って来た。
ネズミの食事の準備を手伝っているユキを見ていると、鼠の1匹が紫苑へ近寄る。

「また紫苑に本を読んでもらいたいって」
「ユキ、子鼠の言ってる事がわかるのか?」

少し驚いた表情をしているネズミに、ユキはうんと頷く。
急に難しい顔をしてユキを見つめたネズミが口を開いた。

「ユキ、あんた…」
「あ」

ネズミが何か言いかけていたところで、紫苑が何かを思い出したかのように言葉を漏らした。
なんだよ、というネズミの問いかけに紫苑が答える。

「昔、母さんの膝の上で本を読んでもらってたのを思い出したんだ…」

母さんに連絡取れないかな、とネズミに聞く紫苑に、ユキが近づいてふるふると首を振った。
ネズミも無理だなとはっきり答える。

「あんた、潰れるぜ」

言われた言葉に、え?と紫苑は不思議そうにネズミを見た。

「くだらないものをいっぱい背負ってちゃ、いつか潰れる」

思い出、NO.6の市民であることへの未練、快適な生活、自分の能力への思い上がり、自尊心…。

「いっぱいあるけど極めつきは母親だな」

あんたマザコン?
そこまで言われれば紫苑も黙ってはいなかった。
紫苑にだって自分の置かれてる状況で母親に連絡取ることなど難しいことは分かっている。
だが思うことくらいは自由だろと反論した。

「捨てろ」

ネズミの放った言葉が頭に響く。

「思いなんか捨てちまえ」

誰かに対する思いに、引きずられ、振り回され、いつの間にか危険地帯に追い込まれる。
だからこそそんな思いなど捨て、自分一人で生きて行けと。

そう言ったネズミに紫苑が近づいた。

「じゃぁきみはどうなんだ?」
「おれ?」

紫苑の勢いに少したじろぎながらネズミは聞き返す。
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