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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


「ここが…西ブロック…」

下水道を出た紫苑とユキが物珍しげに町を見下ろした。
町へ向かおうとするネズミの服を、ユキがちょいと引っ張る。
どうした、と聞けばユキが少し困ったような表情をした。

「この髪と目、隠したいの」
「なんで?綺麗なのに」
「でも変でしょ?水に濡れたら色が変わるなんて」

あまり目立ちたくないのだろう、俯いてしまったユキに、ネズミが首元の超繊維布を解いた。
そしてユキの頭から被せて、首元に巻く。

「ありがとうネズミ」
「いいよ。ほら、行くぞ」

ぼーっと何か考えていた紫苑も呼んで、3人はその場を離れた。



少し歩いて地下へ続く階段を降りる。
こっちだ、と前を歩くネズミの後へついていくと、部屋の前へ到着した。
ネズミが扉を開けると、広がる光景に紫苑が驚く。

「これ…本か!?」
「食い物に見えるか?」
「こんなにたくさんの本、初めて見た」

NO.6では電子ペーパーでしか文字を読んだことがない。
驚いている紫苑とは裏腹に、ユキは近くにあった本を手にとってパラパラと開いていた。

「ユキ、あんたは本読んだことあんの?」
「え?あー…」

んー…まあ…と歯切れの悪い返答に、ネズミは訝しげな視線を向けた。
正直なところ、中途半端な返答はどちらかというと肯定を差す。

「ところでネズミ、体を洗わせてもらいたいんだけど」

紫苑の言葉にネズミがとりあえず、と紫苑とユキにタオルを投げて渡した。
そのまま風呂場へ向かったであろう様子を見ながら、2人が改めて辺りを見回す。

「それにしても…すごい部屋だな」
「本がいっぱいあるけど、ちょっと散らかってるね」

ユキが近くにばらまかれていた本を軽く重ねていると、チチッと鼠の声がした。
2人がそちらに視線を向けると、鼠が本の上で鳴いている。

「本を読んでほしいみたい」
「どれどれ…」

紫苑がその本を開いて、朗読を初めた。
ぎこちない、ほぼ棒読みの朗読にユキがうつらうつらとし始めた頃、ガチャリと扉の開く音がした。
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