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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


決心がついたように、紫苑もその場にカードを捨てる。
そのカードを鼠が加えてどこかへと走っていった。

「あいつが上手く時間を稼いでくれる。そのうちにここから逃げるぞ」
「どこにどうやって逃げるの?」

まずはあれ、とネズミが指を差す。
その方向を見て、紫苑が嬉しそうに呼んだ。

「イッポじゃないか!」
「あんたを助けたいって駄々をこねたんで連れてきたんだ」

トラックの荷台に、イッポが乗っている。
元々2人乗りのトラックなので、紫苑がユキに助手席に乗るように言ったが、ユキがふるふると首を振った。

「私イッポと荷台に乗るから紫苑乗って」
「でも…」
「いいから」

自分より体の小さいユキが心配なのはわかるが時間もない。
さっさと乗れとネズミに言われて紫苑が助手席へ座った。

「ユキ、吹き飛ばされるなよ」
「大丈夫」

ネズミが荷台に向けて一言声をかけ、車を走らせた。

「IDカードが無いのに検問はどう通るんだ?」
「まぁ見てろって」

紫苑がハラハラしながらそれを見守っていると、検問はすんなり通過できた。

「そうか、イッポの清掃用ロボットの証明チップ!」

ふぅ…と息をついて背もたれに体を押し付けた紫苑を見て、ネズミが言った。

「これぐらいで緊張するな。本番はこれからだ」
「慣れてないもんで」
「ホント、もう少しあんたはユキを見習え」

なんでユキ?と紫苑は何も分かっていないようでネズミに問い返す。

「あんたね…さっきのユキの行動見ただろ」
「あぁ!凄いよね、ユキ」

凄いだけじゃなくてだな…言おうとしてそれでも紫苑は分からないだろうと判断し、ネズミは話題を変えた。

「そういえば気がついてた?」
「何?」
「おれの方が背が高い」

嘘つけ、と言い合っていると、何やら会話に気づいたのか、ユキが紫苑側の窓を身を乗り出して叩いていた。
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