第3章 西ブロック
『何をしている!?』
「あばよおっさん。ハイテクの護送車1台損したな」
ボンッと大きな音がし、ネズミが外へ飛び出せ!と叫ぶ。
紫苑が咄嗟に身を投げだし、ネズミもユキを抱えて転がった。
瞬間、大きな爆発音と共に車から火の手が上がる。
見上げたネズミが、上出来、と呟いた。
「2人とも怪我はしてないな?」
「大丈夫、でもこれ…」
手錠がついたままの2人。
あ、とユキが握っていた手を開いた。
そこには2つの鍵。
「あんた…まさかこれ」
「局員のポケットからくすねた」
「ユキ、凄い!」
先程手を伸ばした時に何故握っているのかと思ったら、そういう事だったか。
鍵を持って、ネズミが2人の手錠を外す。
いや、凄いなんてもんじゃねぇだろ、とネズミは思った。
そもそもネズミが動いた直前から、ユキも勝手に動いていたのだ。
銃を突きつけられて危ないところではあったが、ちゃっかり鍵もあの短時間で取っている事から、最初から逃亡を狙っていたのかもしれない。
「外れた。さ、逃げるぞ」
走れるか?とネズミに問われて、もちろんと紫苑とユキが言った。
1つの建物の木の影で、ネズミがIDカードを捨てろと言った。
IDカードには個人情報の他に、居場所を探知できるシステムも組み込まれている。
これがあればどこへ行っても一生追われる身になるだろう。
ネズミの言葉にユキがIDカードをその場に捨てた。
「…相変わらずだな」
「何が?」
いや何も、と言ってネズミが紫苑を見る。
まだ戸惑っているような素振りの紫苑へ、もう一度、捨てろとネズミが言った。