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白と黒と泡沫の少女【NO.6夢】

第3章 西ブロック


ガタン、とベンチから立ち上がると同時に鼠が紫苑の方へ駆けていく。
ネズミ!と呼びながら追いかけてくるユキを見て驚いている紫苑。
鼠?と沙布が首を傾げている間に、その鼠が紫苑の肩にも乗っかり、紫苑に何か囁いた。

瞬間、目を見開いて紫苑が辺りを見回した。

「紫苑、ネズミが…」
「沙布ごめん!ここから1人で帰れるよな!?」

もう一度沙布に謝り、ユキ、行こう!と手を引っ張って紫苑は走った。



2人はネズミを追いかけていたものの、途中で見失って乱れた呼吸を整えていた。

「鼠からネズミの声がした」
「ぼくも聞いた…」

ネズミが近くにいるのではないか、そう思って鼠を追いかけていたのに…。
ポツ、ポツと小雨が降り始める。

「やばっ!ユキ、傘は!?」
「降る前に帰れると思ってたから持ってきてない」
「駄目じゃないか!」

だって荷物が重くなるし…。
呟いたユキの頭から、紫苑が自分のコートを脱いで被せた。

「ほら、急いで帰ろう!」
「どこかで傘買えば」
「これ以上傘が増えたら困るよ」

3人で暮らしている割には家に置いてある傘の量は異常だ。
もちろんそれは、ユキのせいである。
水に濡れてはならない体質なので、傘やレインコートは必須なのだが。
ユキは荷物になるからと言って持たない事が多い。
天気予報で気をつけてはいるが、たまに間に合わなかったりするとすぐに傘を買って帰ってくる。

「ほら、もうすぐ家だから…頑張って走るよ」
「うん」



家に着くと火藍がタオルを手に慌てたように玄関へ走ってきた。

「2人ともずぶ濡れじゃない!」
「雨降る前に帰ってこようとしたけど遅れちゃった」

ごめんなさいと謝るユキの頭を優しくタオルで包むと、火藍は大丈夫だからお風呂に入ってきなさいと言った。
頷いたユキがお風呂へと向かう。
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