第4章 3杯目
「気がついたか?
ケイト先輩じゃなくて、すまない。あそこで寝ていては、風邪をひいてしまうと思って」
リアルガチ天使の方を、召喚してしまった。
いや、…まつげ長!!
髪サラサラ、しかもなんかめっちゃいい匂いする。
なにこれ、なにこれ。
…そして更に、この状況に段々と頭が覚醒していく。
「お、おおおお、おお、おろしてください!
せ、セベクに不敬罪で、おふゆあいずへっとされまます!」
「…落ち着け、監督生。セベクはそのユニーク魔法は使えない」
「そうですけど!そうじゃなくて!」
ゆったりと私を運ぶ彼は、こんなにジタバタしていてもピクリともしない。
体幹やばすぎん?
「それに、万が一リドルのユニーク魔法を使えたとしてもセベクがその理由でユニーク魔法を使うのは、親、リリア先輩とマレウス様だけだ」
ふっと笑う。
「で、でも!先輩の手を煩わせる訳には!」
「騎士たるもの、これくらい余裕だ。あそこで寝るくらい、よほど疲れていたんだろう?」
小鳥の囀るような声…は、どっちかって言うとエペルへの表現だよね。
えっと、えーっと…シルバー先輩は、優しくて甘い?
って!
そんな形容詞どうでもよくて、この状況だけがどうでよもくない!
とりあえず、
ものすごくいい声の先輩に、この状況に、絆されそうになってることがまずいわけで!
「ぐ、グリムを探していたら、迷子になってしまって!だからあそこでふて寝していただけで!元気いっぱいです!」
「そうか」
穏やかに落ち着いて、なんとでもないように言う。
「おかしいです、この状況!」
そう言った時、
シルバー先輩の腕の支えが少し、緩む。
「そうか?暴れると、落ちるぞ」
それがわざとなのか、そうじゃないのかは定かではないけど、突然落ちるのだけは勘弁してほしい。
…痛いのは嫌だ。
「ひぇ!」
「首につかまれ」
言われるがままに、ぎゅっと抱きつく。
すると
さっきまでゆっくり歩いていたのに、あろうことか走り出す始末。
…私をお姫様抱っこしたまま。
「はやい!はやいって、先輩!」
「気にするな。こっちの方が早い」