第4章 社会人場地さん×長編年上ヒロイン
そんな私の気持ちを全て表すように圭介の頬を全力でつねる。「いっでェ!」となかなか全力で叫ばれたがこんなもので私の鬱憤は晴れると思うなよ、こんちくしょう。
「酒の力でさっきまでは素直だったのになァ」
「今も素直に怒りを現してますけど」
「気持ちかったろ?」
「それとこれとは話が別。……ねえ、喉カラカラなんですけど」
「ン。ちょっの待ってろ」
下着だけ履いた圭介はベッドから降りて冷蔵庫へと向かって行った。急にぽっかりと一人分の空間が空いたベッドに寂しさを感じつつも、喉が乾いたのは事実なので大人しく圭介の帰りを待つ。少しして戻って来た圭介はペットボトルの水を私に差し出──そうたところで手を止めた。何で? と思い眉間にシワを寄せながら彼を見上げるとにっこりと擬音が付きそうなほどいい笑顔で──。
「口移ししてやろーか?」
なんて言うものだから、ひったくるようにしてペットボトルの水を彼から取って蓋を開ける。「やっぱ素直じゃねェ」なんて笑っているけど、私が! いつ! 口移ししてくれって頼んだ! 悪戯好きな子どものようにあどけなく笑う圭介は可愛らしいがやることは可愛くない。
小さな反抗を試みてベッドの真ん中を陣取る私を見て喉の奥を鳴らす圭介はベッドの端に座って優しく優しく私の髪の毛をすいてくれる。……。
「こんなんじゃ絆されないんだから」
「俺の女王サマは欲しがりだなー」
「何でお姫さまじゃないのよ」
「お姫サマより女王サマっぽいじゃん、ちゃんって」
「解せぬ」
「ゴリラからだいぶ格上げされただろ?」
「絶対殴る。本気で殴る。グーで殴る」
「ほら、女王サマじゃん」
私の小言をハハッと快活に笑い飛ばしながら触れるだけのキスを落とした圭介は私の顔を至近距離で見ながら頬や唇をつついたり、髪の毛に指を絡めたりと遊びながら私の名前を呼んだ。今度は何だとしかめっ面全開で見やると、それはそれは優しく微笑むものだから……思わずうっと息が詰まる。