第4章 社会人場地さん×長編年上ヒロイン
ほどなくして、ぢゅぱっとわざとらしく大きな音を立てながら唇を離した圭介は──今だ怒ったような瞳で私を見下ろす。
これ、今日はなかなか許してもらえないやつかも……。瞬時に悟った私は必死に息を整えながら今夜自分がいろんな意味で終わることを理解した。ああ、ガッデム。
「言いつけ、守れないワケ?」
「ごめんなさい……」
「謝ってほしいワケじゃねーんだけど」
「あ、待って……んっ!」
私を壁際に追いやった彼は、まるで逃がさないとでも言うかのようにその両腕で私を閉じ込め、また口づけを再開した。さっきまでと違うのは器用に膝を使って私の大事なところをぐりぐりと無遠慮に虐めている、ということ。
お酒のせいもあってか、いつもより敏感に感じてしまう私の体は圭介から与えられる刺激を素直に受け取ってびくびくと震えだす。気持ちいい……けどここ玄関だし……万が一外に声が漏れたりなんかしたら……。
誰かに私の喘ぎ声が聞かれるかもしれない。そんなことになったら恥ずかしすぎてもうこの家来られない! と思う反面、そんなスリルにさえも少し興奮してしまう自分もいて嫌になる。こんなのまるで痴女じゃないか。
「んっ、ふぅ……」
「っはあ……ア"ー情けねェ……」
「……圭介?」
先ほどまでの威圧感はどこへやら。私の肩口に額を押し付けてきた圭介は大きなため息をついたかと思えば「意地悪してごめん」と小さな声で呟いた。間抜けな声でしか返事のできなかった私は少しだけ顔を横に向け、真っ黒で艶やかな髪の毛を見つめる。
少ししてちらりとこちらを向いた圭介はしゅんとした大型犬のような表情をしている。なんで圭介が謝るんだろう……悪いのは私なのに。
まあ! 意地悪は! されたけどねッ!
「イラついた」
「言うこと聞かない私に?」
「違う。そんなちゃんを束縛したくなった自分に──イラついた」
そう言ってまた小さく謝った圭介。ぎゅっとすがり付くように抱きしめてくれた彼の背中にゆっくりと腕を回す。気にしなくていいよ、そんな思いを込めてぽんぽんと軽く叩いた。私の気持ち伝わればいいな。