第3章 場地圭介(社会人)×千冬の親友ヒロイン(大学生)②
「ン。部屋ここな」
そう言ってスマートにドアを開けてくれる意外さに驚きながら──いや、別にエスコートとかできるわけないだろって思っていたわけじゃないよ? ちょっと意外だっただけで、うん。
そんなことを頭の中で弁明しながら部屋へ入る。大きなベッドがひとつとソファやテーブルにテレビ、普通のビジネスホテルと何なら遜色ないように見えるこの部屋で今から……。この先起こることを想像して自然と体が暑くなってくる。
「キンチョーしてんの?」
「するでしょ、そりゃ」
「お互いの体舐め回した仲じゃん」
「ちょっとその言い方やだなあ……」
「ふはっ、じゃー裸の付き合いをした仲にすっか」
そう言いながら後ろから私を抱きしめた場地くん。私の頭に顎置きにしながら、その大きな手を私の服へとゆるやかに忍ばせた。場地くんの手が私の素肌に当たっただけでそこは熱を持ち、私の体じゃないような感覚に陥る。
これから起こることに期待している私のことを場地くんはどう思っているのだろうか。もしかしたら何も知らないセフレができたぐらいの気持ちなのかな。遠すぎず近すぎず、さらりと始まって、いつでも終われそうな私たちの関係を言い表す言葉が思い浮かばない。
「あれから誰かとヤった?」
「シてないよ」
「オナニーは?」
「……」
「無言は肯定か?」
「シた、けど……場地くんにシてもらったときみたいに気持ちよくなれなかったの。場地くんに触ってもらうのが一番気持ちいい」
ずっと私の体をまさぐっていた手がピタリと止まる。不思議に思ってその顔を見ようと頭を動かそうとするも片手で顎を掴まれ、「見んな」の声とともに阻止されてしまった。見られたくない顔とはどんな顔なんだろう、そんなことを思っていると頭上から大きなため息と「反則だワ……」という小さなぼやき。
私からしたら反則なのは場地くんだ。かっこよくて優しくて甲斐性があって、こんな反則級にできた男の人を私は知らない。