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二人の航海者

第9章 船出と希望


「いや、龍水ならこれだろ。
《はっはーーー!!この謎の光が欲しい!!》」

バッシィィイン!!!と龍水の声真似をしつつ指を鳴らす蒼音に、『あー分かるー』と船出組も残留組も皆頷いた。龍水なら確かに言いそうだ。

「違う!いや、指鳴らしも欲しいも合ってるが、肝心の中身が全く違う。不正解だ!!」
龍水がクワッ!!と目を見開き怒る。

「違うのかい?結構自信あったんだけど」
きょとんとしながら右手を上げる蒼音同様に——
龍水が目の前の愛する人と同じ、自身のトレードマークのポーズをした。そして本当に3700年前に言った台詞をそのまんま叫ぶ。答え合わせと言わんばかりに。

「はっはーーー!!!!!!!!蒼音!!!
貴様が……いや、貴様の『心』こそが!!
絶対に欲しい!!!!!!!」

「————!!!りゅう、すい……」
二人は。3700年前からずっと、両想いだったのだ。ポーズも台詞も示し合わせなくても、お互いに欲しがるくらいには。

龍水がポーズそのままに続ける。

「だが今この瞬間、石化するならこう叫ぶな!!
《はっはーーー!!!蒼音!!その心が手に入った今、貴様を俺の嫁にするまでは死なん!!!俺も貴様同様起き続けてやる!!!貴様が、そうしてくれたようにな…!》」

龍水も今では分かる。かつて蒼音が歌手『Aonn』として歌った独り占めライブの楽曲、『花は巡る』。
その中で主人公が記憶の中で描いてまで探し求めた太陽の花は。3700年歩き続けて巡る花は、【七海龍水】だと。

龍水の言葉に、フッと蒼音が笑った。
「ああ、そうしたまえ」
蒼音と龍水の別れが終わった。哀しい別れを、蒼音が希望に塗り替え、更に龍水が希望の色を、太陽の色を塗りたくる。右手を上げて微笑む二人にゲンがニヤリ、と笑った。
「せっかくだから俺も〜〜!!!」
右手を上げるゲンに、何をするゲン!俺達の別れに水を差すつもりか!?と怒る龍水。

「えーー!二人だけ一緒のポーズとかズルいし〜?しかもこんな派手な別れ方しちゃってさーー。こんなのさ、もう《乗る》しかなくな〜い??」
「!!!!」
意味深なゲンの台詞に、皆が意図を察した。
次々と、船出組も残留組も。老若男女も関係なく手が上がる。皆がゲンの作った流れに乗り込む。
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