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二人の航海者

第9章 船出と希望


「蒼音?何故今そのような話が……」
「いいから黙って予想しろ!元許嫁だろう、これくらい当ててみせろ」
無茶苦茶過ぎる蒼音。周囲が全員『龍水が居なくなるから天邪鬼の蒼音の最後の嫌がらせか?』という感じになりつつ、龍水が静かに考え込む。

「貴様は、そもそも起き伸びた人間だ。石化の光でも最期の瞬間にすらならなかったのだぞ?貴様の様な無欲の人間が叫ぶ言葉なぞ俺には——」
そこまで言って、ふと龍水の脳裏に疑問が浮かんだ。

そうだ。蒼音は【無欲の権化】だ。なら、わざわざ3700年も起きてる必要も無い。あんな環境下で目を覚ましたいが為に、ずっと起きている程の壮大な欲望があるとは思えない。直ぐに暗闇に身を任せるはずだ。

……何故だ?

「フフ、矢張り分からないようだな龍水!そんなだと元許嫁の名前は名乗れんな。仕方がないから私が教えてやろう!!……これが、答えだ」
蒼音が、静かに右手を上げる。人差し指と中指を突き立てたそのポーズの意味に、龍水含め皆が目を見開く。

「好きだ、龍水!!!!!
私は本当はずっと——君が、欲しかった……!!」

バッシィィイン!!!と。復活してからの間に特訓し上達した指鳴らしが、その場に響く。これが蒼音なりの【別れの餞別】なのだと。皆が瞬時に悟った。暫く固まった龍水が、生まれて初めて出した音のように、あ、と声を漏らした。

「蒼音……貴様、今のは……本当か………?」
「いいだろう、龍水?最期になるかもしれない瞬間くらい。嘘つきが本心を言ったって……!違うか!?」

泣き笑いする蒼音に、ああ本当なのだと龍水が悟った。まさか、まさか。ずっと前から欲しかった、蒼音の心の方が知らぬ間に手に入っていたとは。

「……ッ!ああ違わん!貴様ばかりに言わせてばかりでは詰まらんからな!?俺の石化ポーズも当てろ、蒼音!」
龍水が負けじと言うと、え?と蒼音が一瞬ぽかんとするも答える。
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