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二人の航海者

第9章 船出と希望


「スイカちゃん。今回の航海は、命の保証は無い。勿論あの龍水だ、船員の命は大事にする。だがあの石化の謎を解く旅だ。危険な事に変わりはない。それでも、乗りたいか?」
最初から無理とは言わず、静かにスイカの気持ちを確かめる様に告げる蒼音。スイカがブンブンと仮面を上下に揺らした。

「それでも、それでも乗りたいんだよ…!スイカも一緒に行って、ミライも司も、みんなのお手伝いがしたいんだよ…!!」
仮面をグイと持ちあげ、涙を拭うスイカ。そうか、と蒼音は理解した。スイカは獅子王司の妹である未来と仲良しだからこそ、友達の力になりたい想いが強いのだろう。誰か他の人の力になりたい、か。仮面をそっと取ると、スイカ本体を抱き締めた。

「蒼音…?」
「君は…私によく似ている。私達の様に他人の為に身体を張る人間はね、他者からすれば無欲で無謀と言われるんだ。普通自分の為に身体を張るからね。でも仕方が無いんだ。皆が笑った姿を見る事が私達の幸福でもある以上。皆を幸せにしたい。それが、私達の欲望だ。いいよ、スイカちゃん。君に協力しよう」

ホントなんだよ?!と驚くスイカ。うん、と蒼音がスイカの前で微笑み顔を包み込んだ。

「私もやり残した事があってな。出航の時に私が陽動して視線を引きつけよう。具体的には」
スイカの耳にこしょこしょ……と作戦内容を話すと、え!!とベッドに座るスイカの足が跳ねた。

「そんなのいいんだよ…??本当に…」
「ああ。龍水がどうせ密航者は出航地に強制送還だ!とか言うだろうが……大丈夫だ。自然に詳しくて潜入も出来る君なら『お役に立てる』さ。君の腕はこの私が保証しよう。そもそも龍水は沈む船の操縦なぞしない。スイカ、君も無事日本に返すだろう。

龍水や皆は君が子供だからと省こうとするだろうが、軍師の前ではみな等しく人材だ。子供であろうと戦力になるかが基準だ。君は立派な戦力だ。この私の言葉が船出組の乗船チケットだ、何か言われたらそのまんま今の台詞を言え」
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