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二人の航海者

第9章 船出と希望


「何の事だか知らないぞ私は!まあ兎に角おめでとう。千空、ゲン。皆」
そっぽを向きつつ蒼音が答えた。
「そこで認めないのが蒼音ちゃんよね〜?まーやっと出航出来るからジーマーで助かっちゃった★」
いや君らのチカラだよと言う蒼音にふと、笑みを消して千空が尋ねた。

「軍師。とっくに分かってるだろうが、テメーは残留組の纏め役だ。今回の旅には俺やエンジニアと帆船運行の力仕事の人員が要る。残るのは爺婆や子供もいるルリ達石神村の面子と、司帝国の面子のごちゃ混ぜだ。それを纏めて本土の『人類発展チーム』として機能させなきゃなんねえ。——やれっか?」
千空なりの【龍水と別れるが、それでも大丈夫か】に蒼音は頷く。

「当たり前だ。私を誰だと思っている?科学王国の軍師、六道院蒼音だ。あの司の元で宰相をした人間だぞ?この程度朝飯前だ」
力強く言い切る蒼音。だろうな、と千空が返す。千空とゲンの自身の覚悟を称える自身を包み込む優しい眼差しを背に、その場を後にした。家に着いたのはいいが……少し大きなスイカが玄関横にある。

「部屋の中においで、ドア開けるから」
蒼音がそう言って戸を開けると。スポン!とスイカ仮面から少女が現れた。
「ありがとなんだよ〜!蒼音、お邪魔するんだよ」スイカが一緒に部屋に入り、ベッドに並んで座った。

「で?このタイミング、さては明日の出航について私に相談事かね」
単刀直入な蒼音。こくん、と下唇を若干かみ締めてスイカが頷く。

「そうなんだよ。スイカも、お役に立ちたいんだよ……!!船出組に行きたいんだよ」

成程。龍水の事だから、明日辺りに船員リストを出すが——まだ幼い子供であるスイカは、恐らく選ばれない。真正面から説得を試みても、龍水が乗船させる可能性はゼロだろう。故に、残るのが確定していて残留組の最高責任者である蒼音の方に事前にきちんと相談した上で、何とかして乗り込みたいのだろう。
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