第9章 船出と希望
シンデレラ・パーティーが終わり。
蒼音は龍水と初めての本格的なデートを終えた。龍水に連れ回される事はあったが、自分からこんな風に誘ったのは初めてだ。龍水からのプレゼントであるぬいぐるみをぎゅ、と腕に抱き締める。
「じゃあね、龍水」
「ああ。《また》遊ぶぞ、蒼音」
蒼音に龍水が微笑んだ。もう一度があると断言する龍水。変わらぬ好意を素直に受け取った。ずっと龍水の気持ちを素直に受け取らずにいた自分からすれば、大きな一歩だ。
「うん。またね」
去りゆく蒼音の背中に、龍水はぽつりと呟いた。
「贈り物をして正解だったな。あのうさぎが少しでも気を紛らわせてくれればいいが」
龍水も身を翻した。二人の辿る道は——交わってはまた、離れようとしていた。
杠手工芸チームの蒼音は特に後片付けは無い。今回の祭りで最も大変だったから、という事で免除された。
蒼音は自身の家に着いた。お布施も兼ねて千空達に大量のドラゴを使って作らせた、小屋のような家だ。四畳半だが、物欲なき蒼音にはそれで事足りた。ベッドに机と椅子。棚の中には、軍師としての仕事書類類が収めてある。お風呂等は千空の作った公衆浴場等の施設を使い、ドラゴを落とした。ベッドに座り込みうさぎを両腕で持ち上げる。俺の心だ、と言って龍水がくれた3700年前もの時を超えて貰ったお返し。
「後でドラゴが足りたか軍師として確認はしないといけないが。その前に、君と過ごすとするか」
枕元に置いてうつ伏せになった。腕組みをして顎を乗せたまま、うさぎを見やる。もふもふの愛らしい顔のうさぎは、キリッとした眼差しの自分が贈った物と違い、愛らしいまん丸お目目だ。自分が被っていた帽子も被せたが、よく似合っている。蒼音はニコニコしつつ少しうたた寝をした。
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「ドラゴがーー……足りたよ〜〜〜ん!!」
ブワァッ!!と謎の花びらを撒き散らすゲンに、千空と蒼音がニヤリと笑った。
「ククク、シンデレラ・パーティー様々だな!?軍師サマのお陰であの欲望の権化もお金落としまくったしな〜??」
チラリ、と蒼音を悪ーい顔で千空が見る。デートテンションで大金を使った元許嫁の存在はデカい。