第10章 託されるもの
シャンクスが中腰になってルフィの頭に自分が被っていた麦わら帽子、かつて海賊王が持っていたそれを被せてあげた。そしてシャンクスの穏やかな眼差しはルフィから隣、私にも向いて頭を撫でられながら優しい言葉が降ってくる
シャンクス「……とも一旦はお別れだな。久しぶりに元気な姿で再会できて、幸せに暮らせてる姿を見れて本当に良かった。たとえ次は敵同士になっても関係ない。おれにとってお前はあの人の忘れ形見で、赤ん坊の頃からずっと妹分さ」
「ふふふっ、そう言って貰えて嬉しいです。覚えててくれて、探していてくれて……本当にありがとう、シャンクスさん」
シャンクス「おいおい、こんな時ぐらい他人行儀な呼び方はよしてくれ……。実はこっそり待ってたんだぞ、呼び捨てで呼んで敬語もなくなる時が来るのを」
「んー……、そうは言ってもですね、距離感が分からなかったんですよ。だけどそう言ってくれるならもういいや、また会おうシャンクス。ウタちゃんも元気で過ごすんだよ、また会えたら貴女の歌を聞かせてね」
ウタ「う゛、う゛ん゛……っ!ちゃんもね?!」
そう言い合っては最後に距離が縮んで私達に、子供達のような辛気臭い雰囲気なんて一切ない。私がシャンクスの後にウタちゃんにも声をかけると、いつもはピンッと立ち上がってる髪がしょぼんと落ち込んで垂れちゃってるし、くりっとまん丸いアメジストの両目も端に涙を浮かべてギュッと瞑っている。彼女はルフィと向かい合って同じように別れを惜しみ、歯を食いしばって大声で泣きたい思いに耐えていた
すると、私が声をかけた事が踏ん切りとなったのだろう。私に頷きながら涙声の返事をしてくれた後、顔を伏せたままのルフィに一歩だけ歩み寄って麦わら帽子越しに手を乗せた。一連の動作はまるでシャンクスと私のよう、お姉ちゃんとして年下のルフィに背中を押せる言葉を告げた
ウタ「……約束だからね、ルフィ!待ってるんだから絶対だぞ、これがもっと似合う男になるんだぞ!」
シャンクス「いつかきっと返しに来い、大きくなって会いに来い。立派な海賊と海兵になってな」
そう言ってシャンクスがルフィを励ましたウタちゃんの手を引き、仲間を連れた二人はレッドフォース号で水平線の彼方に出航したのだった───