第10章 託されるもの
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今までフーシャ村を拠点にしていた赤髪海賊団だけど、いよいよ1年以上も経って周辺の旅を堪能できたようだ。彼らはこの日をもってこの村を旅立ち、遠い北を目指して浪漫を求めて出航する。その為、港では船員達が出航時間までに総出で物資を船に運び込んでおり、朝から行ったり来たりと慌ただしい賑やかな作業に奮闘していて。そんな大勢が多忙な中を船長のシャンクスさんと、紅一点のウタちゃんが見送りに来た私やルフィに最後の挨拶が出来る時間をくれた
そして最後だからとしんみりて寂しげなルフィに、シャンクスはやっぱり意地悪な笑みで揶揄うのだけど……。あの山賊が原因で起こった一件以来、晴々とした雰囲気になったルフィは今までと違った決意を胸にここにいる
ルフィ「うん。まぁ悲しいけどね、もう連れてけなんて言わねぇよ!自分でなる事にしたんだ、海賊には」
シャンクス「どうせ連れてってやんねーよー。お前なんかが海賊になれるか!!!」
ルフィ「なる!!!」
ウタ「!!」
ベーッと舌を出しながら笑顔でおちょくるシャンクスに対し、ムキになってイイィィッと歯ぎしりしたルフィは高らかに叫んだ。海賊にさせてもらうんじゃない、自分の力で海賊になるのだと。ウタちゃんはそんなルフィの決意と気迫に目を見開いて、数日前までと目に見えて違う男友達の言葉に驚いていた
ルフィ「オレはいつか、この一味にも負けない仲間を集めて!!世界一の財宝を見つけて!!」
海賊王になってやる!!!
そう言って叫んだルフィの誓いの言葉に、ウタちゃんは大きく口を開けて唖然とし、赤髪海賊団も動きを止めて全員が不敵な笑みを浮かべていた。私もこの時に初めてルフィの口から夢を聞いて、やる気に満ちたその目を見てはフフッと頬を緩んだ。これでは弟達が二人して敵になっちゃうけども、私個人には戦うつもりが毛頭無いし、本人達が望んだ道なら反対はしない
シャンクス「ほう……!!!おれ達を超えるのか……じゃあ、この帽子をお前に預ける」
ルフィ「!!」
シャンクス「おれの大切な帽子だ。元はの父親が被ってた物で、今はおれが貰い受けた大切なものだ」
ルフィ「……!!!」
歯を食いしばって俯くルフィの目からは大粒の涙が伝って、嗚咽を漏らす小さな声が聞こえた