第10章 託されるもの
ついつい厳しくお説教紛いな事を言ってしまったので、今は椅子のおかげで少し高い位置にあった義弟の頭を軽く撫で回す。するとさっきまで私が硬い口調で真剣にルフィを叱る言葉に耳を傾け、騒ぎを止めて注目していた赤髪海賊団が再びわーっと盛り上がった
「いやー、ルフィの行動はびっくりしたからな!ウタが散歩に出ててくれて助かった!」「今日の宴はルフィが見せた勇敢さを祝うんだぜ!」「もほら、ジュースでも飲めって」そう言い合っては木製のジャッキを一気に飲み干す、ほろ酔い状態のルウさんとホンゴウさん。ルフィの横ではカウンター席に座ってたシャンクスさんがジュースを私に渡して来て、思わずイラッとしながら深いため息を吐く
「まったく……あのねぇ、シャンクスさん。貴方達がそうやって真剣に向き合わないから、ルフィが今回の行動に出ちゃったんですよ?最近は度胸試しみたいにあれこれ言って、ムキになったルフィを揶揄ってましたよね?」
シャンクス「あっ、あーいや……それについては今日で痛感したんだ、しっかり迂闊だったと反省してるぞ?なぁ?」
「「お、おう……」」
「だったら歓迎ムードで祝わないでください!あの子がどれほど本気なのか分かっていながら、純粋な一般育ちの子供に希望を持たせるような行動を続ける事が優しさですか?流石に遠ざけ方が適当すぎるし、もっと真面目に誠意を持って接してあげてください!ぶっちゃけ大人の海賊よりもウタちゃんの方が、きちんとルフィと正面で向き合ってくれてます!大人なりの対応ってものがあるのでは?」
「「す、すいません……」」
こうしてルフィの怪我について散々ジト目で睨んで文句を言い募るけど、今回はある意味彼らの海賊らしい一面が垣間見えたって事なんだろう。ずっと頭では感性の違いがあるのを分かっていたけど、いざそういう部分が見えてしまうと「さすがは海賊」って納得してしまった。と言っても、別に彼らの不器用すきる優しさは理解してるし、本気で怒ってるわけじゃ無いのでこれ以上縮こまる彼らを責める気もなかった。だから素直にシャンクスさんからジュースを貰って、彼のそばに置かれた宝箱が気になったけど、ルフィを挟んだ反対隣の椅子に座った時だ
「邪魔するぜ」と下卑た笑み浮かべた山賊達が、威張り散らした態度で店内に入ってきた───