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転生しちゃった元鬼殺隊士の救済録

第9章 エレジア事件(FILM REDネタバレあり)



だからこそ今までもずっと思ってきた、ウタは海賊である自分達の元にいて幸せなのか。もっと陸地の平和に生きれる場所で、大好きな歌を歌って育っていくべきじゃないのかと……。けれど、どうしようもなく嫌だった。それでも愛する娘を手放す事が、ウタが歌う綺麗な声を聞けなくなるのが嫌だった



嗚呼、そうか……。ロジャー船長、貴方もこんな気持ちでを島に返しにいったのか……。だからオレやバギーに念を押したのか、自分には出来なかった選択を、覚悟を決められるように……



生前の憧れだった男の背中が脳裏に浮かんだ。そして次に思いを馳せる人物は娘と大して変わらぬ少女、今や立派な大人の女になろうとしている妹分。母親似だろうは一層綺麗に育って華奢でお淑やか、船長の面影は爆発的な戦闘力の片鱗、それと家族を全力で愛する情の深さを常々感じるほどだ。よく知る赤ん坊の頃は大泣きよりも笑っている事が多く、当時から肝が据わって船長に似た弾ける笑顔はロジャー海賊団にとっての『華』だった……



きっと無事に産まれたと思しき下の子の方も、両親からの色んな素晴らしい部分を継いだに違いない。そうやって色んな感慨深い事を思い返して考え、何も知らないウタを守れる方法を想像してみる。例えばもしも自分達がこの惨状を起こした悪者海賊となり、ウタを利用した挙句置き去りにするシナリオ……。ここの島民で生き残っているのは国王・ゴードンのみだ、彼もウタを恨む事なく「罪はない」と言ってくれている。きっと頼めば受け入れてくれるだろう、ウタを世界で輝く歌姫にしてくれる……



けれどウタ自身の望みは何だ?
何も覚えていないだろうウタが、いつか真実を知る日が絶対来ない確証はあるか?
そうなった時に自分を責め、歌を嫌いになりかねない娘を支えるべきは誰だ?
ウタはオレ達の自慢の娘だ、未来も心も全部守るには何が最善だ?
本当にウタの為になるもの、父親のオレや仲間達が出来ることは……



オレは疲れ果てたウタを腕に抱きかかえ、眠り続ける幼い寝顔を見つめながら考えた。ひたすら考え続け、ロジャー船長の言葉や妹分を思い浮かべ、漸く出せたのは全員で過酷な事実を乗り越える為の決断だった




「今すぐゴードンも連れて脱出しよう、海軍が来れば戦闘になる」


───シャンクスside END
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