
第9章 エレジア事件(FILM REDネタバレあり)

───シャンクスside
音楽の島・エレジア……、そこは偉大なる航路(グランドライン)の東南に浮かぶ、音楽の都と呼ばれるほどに音楽で栄える穏やかな島だ。そこには音楽を沢山学べる立派な学校があって、ウタにもそんな音楽に溢れた環境を楽しんでほしいと、拠点のフーシャ村からエレジアへ航海の旅に出た
そしてエレジアに着くと国王・ゴードンが快く歓迎してくれて、彼にウタを紹介したら是非と街中や学校の中を案内してくれた。特にウタが楽しんでいたのは学校の中で、楽器を保管している部屋や歌の練習場所、生徒達が授業を受ける様子も目を輝かせ、頬が紅潮するほど喜んでいた
なので「ここで住み込みの勉強をしないか」と提案してみたけれど、ウタ本人は世界に広まる歌手より『赤髪海賊団の音楽家』でいたいらしい。そういう娘の健気な言葉を聞いて嬉しい反面、せっかくの綺麗なその歌声が勿体無いとも思った。そしてウタが入校せずにエレジアを出ると知った島民達も惜しんでくれて、せめて最後にウタの歌声を聞こうと歌唱会が開かれた
悲劇はそんな華やかな会場で突然起こってしまう……
音楽の島・エレジアに封印されし「歌の魔王」。黒いハットを被ったピエロとも竜とも見える顔立ちで、両腕がピアノの鍵盤になっている異形の怪物。数珠のように並んだ髑髏の霊魂を首元に浮かべた姿で、とても醜悪で禍々しいオーラを放っていた。奴はウタウタの実の能力者が禁忌の楽曲『TotMusica』を歌うと、ウタワールドのみならず人間界にも降臨できる。一度顕現してしまえば最後、ウタワールドと現実世界両方に姿を現し破壊のかぎりを尽くす存在……
そして明確に悪意のある意思が存在するらしく、楽譜自体が自力の活動・浮遊ができてしまった。だから奴は何も知らないウタを利用し、封印を解かれて出現してしまった所を何とかオレ達が倒せたんだが……
あれほど自然と文明が綺麗に在った平和な島が、戦いの後には一切の名残も消えて無くなっていた。辺り一帯は夜闇を真っ赤に染めるぐらいの火の海と化し、転がる建物だった瓦礫や島民達の遺体は破壊と殺戮の凄惨さを生々しくも物語っていた。正に悪魔の齎した醜悪な地獄、しかしきっかけとなったウタに罪はない。これらは全て予期せず起こった悲劇なのだから。ウタの歌は聴いた者に希望を、沈んだ心に光を届ける最高なものだから……
