第6章 縁(えにし)
コハクの話を聞く限り、エースやサボくんのツッコミ通り人間臭い暮らしをしているようだった。とは言え、ロジャー達の船と行動を共にし、私と別れた後もそれなりに海中の旅をしたのだろうし。本人が「のんびり夫婦で暮らしたい」と言うなら、それだけ満足出来て落ち着いたのを喜ぶべきなのか……
しかしカナタに産まれたらしい子供、いくら海王類でも得意な種族とはいえ一匹で来るのは特攻感がヤバすぎる。ここまで来るのに海賊も航海で悩むらしい超巨大な海王類で溢れる『凪の海域(カームベルト)』や、『赤い土の大陸(レッドライン)』を超えて来るあたり相当アグレッシブだし
「けどねぇ……エースやサボくんはともかく、私は別に海賊になる気は無いし……」
「「ええええっ?!!」」
エース「じゃ、じゃあ姉ちゃん!なんでそんなに強くなったんだ?!オレはてっきり野望が無くても海賊になりたいだけかと思って……」
エースとコハクは私の言葉が意外だったようで、仰天するほど驚きながらエースに問い詰められて苦笑いになる
「確かに冒険や自由にロマンは感じるけれど、何より私はこの時代で誰かを虐げ、平然と弱者を傷つける奴らを見ると許せないの……。それが海軍、貴族、政府、天竜人だろうが関係ない。それに海賊の中にも人情や仁義を重んじる真っ当な連中がいるんだもの……。これは前にエースに話したよね?」
エース「あ、ああ」
「私はそういう腐った連中達から、色んな人々を助ける為に悪党を倒したい。それだけじゃなくて冒険も、やりたい事を全部自由に出来る人間になりたいの……。あぁでも、もちろんエース達が一番大切よ?お姉ちゃんだもの、ピンチの家族を護れる知恵も武力もいるわ!まぁ要するに、私は真面目な生き甲斐を貫きたいわけよ」
色々言ったけれど結論はそう。大事な全てを絶対手放せない為に、後悔や不幸を吹き飛ばす為に、世界の脅威と敵を前に屈しない為の強さ……。前世のような人生になるのは御免だ、私は自分を誇れる生き方をしたいと決めている
サボ「……いやでも、姉ちゃんのそれって海賊とあんまり変わらないんじゃ?」
エース「そ、そうだよな?」
「いやいや、賞金首になるかならないかは大分違うからね?私は賞金首になる気はないの」