第6章 縁(えにし)
そんな小さな少年を挟み、エースと反対隣を陣取っているもう一匹のオトモダチ……。その子の全長はなんと、私達が限界まで見上げないと分からないぐらい巨大で真っ黒モコモコな羽を纏った鴉だった。ぶっちゃけ私達の身長なんて豆粒サイズ、その子の足の長さの半分も満たないうえに四本生えてる鋭利な爪はこの森で見かけないサイズ感なので迫力満点だ……。聞けば5mを超える身長らしく、エースが曰く「まだまだ伸びていくわよ〜ん」と本人(本鳥?)に自慢されたらしい
さて、そんな風に逞しすぎる鴉は今、私を見下ろしダバダバダバ〜ッと滝の様に涙を流しまくっている。右目の下に横一線に勇ましい傷跡を見せつけるその子は、間違いなく思い描いた相棒の姿そのままで……。なのに前世と今世で目線、身長が全く違ううえに、最後に会った時より格段に成長していて図体のデカさと号泣する様のギャップが凄い
コハク「ガァァア゛あ゛ッ!!ぢゃん゛、ぢゃん゛……!!あ゛い゛だがっだわ゛〜!!」
「こ、コハク……覚えてたのね……」
コハク「もちろんよぉお゛お゛!!ばなだがあいづとわだじがずんでだじま゛でぃぎだどき、びびっでぎだんがから〜!!(もちろんよぉおお!!貴女がアイツとワタシの住んでた島に来た時、ビビってきたんだから〜!!)」
荒んだ声で泣き叫ぶカラス……もといコハクは、私に涙も鼻水も涎も垂れ流しながらガァガァと鳴いて訴えて。一体何を『覚えていた』と聞いたのか、なんて私達は確認し合う必要もない。前世の記憶も物心も無かったはずの初対面、しかし赤ん坊だった私は本能でカラスに懐いて出会えた事を喜んだ。海王類のオトモダチも彼のお陰で出来たのだ。けれどほんの1、2年だけで私の旅は終了、後は隠れて過ごしてお世話先でのお別れだ。ほとんど味気ない交流だったと思う。だからコハクが私を探し回り、実に8年ぶりに再会するとは思ってないわけで……
お陰で隣でカラスに見えない形相で感動しているコハクを見、ゲラゲラ大笑いするエースとサボくんは本当に無邪気で可愛いらしい。そしてひとしきり楽しんだ後、サボくんが未だに笑いながら目尻に滲んだ涙を袖で拭って、私に満点の笑顔と元気な挨拶を発する
サボ「エースの姉ちゃん、こんにちわ!オレはグレイターミナルに住んでる、サボってんだ!」