第6章 縁(えにし)
それだけこの村には非情な海賊達が訪れ、悪質な仕打ちを受けていたのだろう。そんな犠牲者達が世界中には沢山いるのだ
しかもタチが悪いのは賊達だけではなくて、悪意や私欲のままに他者を蹂躙していく人間もいる。本来市民を守っていくべき海軍達も、自分の立場や『正義』の言葉を利用して汚職にその手を染めるのだ。更には貴族や王族や天竜人といった、差別で市民を罵倒したり奴隷にさせる性根が腐った連中もいるらしい……
たまに気の良い旅人達や海賊が来ると、「そんな奴らに気をつけろ」って忠告してくれて。そう言ってくれた人達の瞳が宿しているのは根深い憎悪、世界への絶望と自由への渇望でギラギラ燃えていた。そんな彼らが村を去った後、どうしているかは分からない。けれど、世界にとって彼らは間違いなく秩序を乱すならず者達だ───
*
エースに義弟がいるのを伝えたものの、正直あまり良い反応が無くて合わせられていない。最初は何度も一緒に村へ降りよう、会ってみないかと誘ってみたのだけれど、色々思う所があるらしいエースはその話題が出る度不機嫌で。「姉ちゃんはオレの姉ちゃんだろ?」とムスッと頬を膨らませて拗ねてしまい、寂しがる姿を見せられると無理強いは出来ず……。ルフィの方はエースが気になって仕方ないようで聞いてくるけど、エースの方はルフィと仲良くしたい様子が欠片も無い
そんな警戒心ばりばりの猫みたいなエースだったが、ある日、耳まで顔を真っ赤に染めて「友達出来た」と照れ笑いを浮かべて報告してくれた。なんでも『不確かな物の終着点(グレイターミナル)』で出会った同い年の少年一人と、その少年との狩り中に会った喋れる巨大なカラスと仲良くなったらしい。グレイターミナルは貴族街の外にあり、貴族の街との壁が築かれている貧民街、ゴミ捨て場のように街でいらなくなったものを破棄する場所だ
少年はそこで自由に憧れ、海賊を目指してひっそり生きていた中でエースに出会ったと聞く。最初は気さくで明るく話しかけて来るその子に悪い態度を取って、遠ざけようと逃げ回っていたけど毎日絶対追いかけてきてめげなかったそうだ。そして彼があそこに一人で暮らし、共に海賊を目指して、一緒に獰猛な動物と戦ううちに親友と呼べる仲になっていた
エース「そいつの名前、サボってーんだけどよ!姉ちゃんに紹介してぇんだ!」
