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転生しちゃった元鬼殺隊士の救済録

第5章 鬼の子達よ、達者にあれ



最初は私が狩りの見本を何度か見せてあげ、数日経ったら守りながらも戦えるようになると、すぐに一人でも獲物を狩れるようになっていた。おかげであっという間に目標の10匹討伐を達成し、嬉々として呼吸の訓練を始めたエースだっただけど……


しかし努力は予想外にも裏切られてしまった、何故かエースは全集中の呼吸が型に活かせない体質だったのだ。どれほど肺や筋肉を存分に鍛えていても、異世界の技術なせいか体を強く出来ても剣技に反映されなくて。しかし経験と鍛錬次第じゃ強さは得られる、補って余りある才能を秘めていた。それでもエースは大層悔やしがって、泣きそうな顔でショックを受けてる様子は胸が痛かったけれど……


しかし、何も全集中の呼吸だけが強さへの道ではない。前世じゃ呼吸を身につけたとて首を切断できる腕力が無く、鬼を殺せる毒を作って柱になった仲間がいたのだ。加えて今の私は常中が出来ていないし、『痣』や『透き通る世界』という更なる領域もあるわけで……。そして嬉しい事にエースは強気で諦めが悪い性格だ、「全集中の呼吸で無理なら我流で強くなればいい」と宣言し、その後も私と全く同じ修行を続けたのだ


けれどあの子への試練は次々降りかかっていく……。5歳になったエースに頃合たろうと、おじいちゃんが私達の出生の秘密を明かしたのだ。海賊王ゴールド・ロジャーに対する恨み、世界を揺るがす海賊達の混沌、世界中が敵とも言える残酷な運命にエースは泣かないながらも酷く傷ついた……。元から喧嘩ばっかりしているダダンさん達にも心を閉ざし、密かな寂しさ・悲しみを鋭い目つきと警戒心で覆っている


私達は生まれて良かったのか、と常に疑問を抱えながら……




───「鬼の子だよ?!!万が一政府が嗅ぎつけて来たら、あたし達いったいどうなると思う?!!」───


───「まーまーお頭……」───




ある日の深夜、偶然起きてたエースがそう言い合ってるダダンさん達の会話を聞いた。そして当然世界と父親に絶望してしまったエースは父さんを嫌い、自分を命懸けで産んだ母さんに対して複雑な感情を持っていた。全てを承知でなおも両親を愛し、エースを愛し、ダダンさん達と普通に暮らせる私も戸惑う対象だ


だからある日、コルボ山の奥にあった大海を臨める崖まで出かけた時、誰の目も無いそこで姉弟だけの秘密の話をしたのである───
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