第5章 鬼の子達よ、達者にあれ
「ねぇエース、父さんは確かに悪名高い海賊よ。妊婦狩りでは大勢の妻子が被害に遭ったもの……、世界が物騒になったのも死に際の言葉が原因だったし、海賊の大半は悪党ばっかりだから……」
エース「!!」
「だけどあの人自身は決して嫌われる性格じゃなかった。その辺の性根が腐った高額海賊をぶっ倒したり、正義を被った悪い海軍・貴族は怒って天誅するし、資源と財宝で欲しい物は卑怯な真似せず堂々と、大騒動にしてまで奪ってくようなまっすぐな男よ」
エース「えっ、は……?」
「敵とも戦った後は普通に宴をやってたし、海軍無視して戦闘も平然とやったし、仲間を見捨てるような仁義を欠くようなタイプでもない。そりゃあ伝説いっぱい作ってたろうし、世間を散々振り回していたわ。けれど誰にも負けない強さがあって、羨望を向けられる陽気さとカリスマがあったのよ。その分、あちこちに敵が多かったし、恐怖の対象にされてるぐらい破天荒な人だったけど……」
エース「……なぁ姉ちゃん、それってクソ親父褒めてんの?貶してんの?」
二人で崖の先端付近に座り込んだら覚えてる限りの父さんの話をするが、私の罵倒と褒める言葉に混乱を極めたエースが眉間の皺を深めた。この子の嫌悪感を一切隠さない険しい表情、低く唸るような声にも苦笑いを浮かべた私は敢えて答えない。私も父さんに対する気持ちは結構複雑なんだよね……
「しかも毎日お酒を飲んだくれて、毎回量はやばいし、絡みも二日酔いも酷いし、普段から色々雑だった。髪もお髭もボッサボサだし、トラブルメーカーだったし、姉ちゃんを危険な船に乗せて必死に護ってくれた、そうまで親子で一緒にいたがる人よ?良くも悪くもめちゃくちゃでしょう?でもね、───」
エース「!!」
ぶっちゃけあんまり(今世の)過去は覚えてないけど、両親は互いを愛していたし、私とエースの無事を願って大切に想ってくれていた。たとえ世界が私達二人を否定したって、おじいちゃんや私がお世話になった海賊団、ダダンさん達が居場所も暮らしも隠し通すのはハンパな覚悟じゃないと思う……
そう言って頭を撫でながら父親としてのロジャーを語れば、目を見開いて愕然とするエースがくしゃりと苦しげに表情に歪め、プイッと反対側にそっぽを向いた