第12章 麗しい華姫、爆誕 海兵side
荒れ狂う海流と海面の高波、激しい雷雨を孕んだ嵐に、凶暴で船に襲いかかってくる海王類など。彼らは数多のピンチに苛まれながも何とか嵐の被害区域から脱出出来たが、その戦艦の上司が部下達の点呼を取っていくと一人だけ足りない……
それが想像の通りちゃんだった。どうやら大きく船が傾いた時に海へと落下したらしく、戦艦内をどれだけ探してもいなかった。普通なら大荒れの海に巻き込まれると助からない為、「さすがのアイツで望み薄だな……」と早めの段階で見捨てる決断をしたが、船員の一人が異変に気がついた。嵐を抜けた時から風が全く吹かなくなって、前方で数百メートルを超える海王類の大群が迫って来るのが見えたらしい……
そこは偉大なる航路(グランドライン)を挟み込んでいる海域・凪の帯(カームベルト)だったのだ。そこでは一層凶暴で巨大な海王類が棲みつき、風が吹かない事から船の進行が阻まれ、航海中の多くの者達が頻繁に死んでしまう。そんな海域で不幸な事にこの船の上官、大した戦闘力を持たないのにこれまで任務の成り行きで昇級して来た人間だった。しかも部下をぞんざいに扱って偉そうぶってると有名な、よく聞く典型的な嫌われ上司という奴で……
もちろんそんな上司の一団だから海王類の大群が押し寄せてると分かると、大慌てで混乱しているばかりで指揮が碌に取れなかったらしい。だから各自で対処しようと決死の覚悟で武器を持った時、横から海面を飛び出して来た存在がいた……。嵐で失踪していた筈の新人ちゃん、ちゃんだ。彼女は既に百メートル級の海王類を一匹仕留めていたらしく、担いで状態のまま船と大群の間の海面に飛び出した彼女が、恐ろしい怪力で気絶していた海王類を投げつけた
……もう一度言おう、僅か150cmそこらの少女が、数百メートル数百キロの海王類を大群に向けて軽々とぶん投げたらしい。筋肉なんて全くなさそうな、華奢な体つきの女の子が、である。しかもそれと同時に彼女の真下で海王類が狙いをすまし、大口を開けて食いつかんと飛びだしてきて。急に真下から襲われようとしているちゃんは慌てるどころか、体勢を立て直して『嵐脚』という六式の強力な蹴りを浴びせた。その威力は巨体が海から浮かんじゃうほど吹っ飛ぶぐらいだそうで……
思わず全員が目玉が飛び出そうなぐらい驚いたらしい、そりゃそうだ
