第1章 真夏の宵 ☆*:.。. 真田幸村 .。.:*☆
寝苦しさからか、不意に意識が浮上した幸村は褥の中で寝返りを打つ。
(っ…暑っちぃな…まだ夜明け前かよ…)
寝ている間に汗をかいていたらしく、寝間着が肌に張り付く嫌な感触に思わず溜め息を吐いてしまう。
真夏の夜は深夜になっても一向に気温が下がらず、息苦しいほどの暑さであった。
幸村は褥の上で身を起こし、汗ばんだ襟元にパタパタと風を送る。
「ん…んんっ…」
くぐもった小さな声が聞こえて、ハッとして自身の隣に目をやると、愛しい恋仲の娘がもぞもぞと寝返りを打っていた。
(っ…起こしちまったか…?)
恐る恐る、そおっと覗き込むが、どうやら目が覚めたわけではないようだ。寝惚けているのか、口許をむにゃむにゃと動かしている。
幸せそうに緩んでいる頬が堪らなく愛らしい。
(な、何だよ…可愛いな、おい)
恋仲の無防備な姿に、かあっと身体の熱が上がる。
昨夜も、夏の宵の暑さを忘れるぐらい散々に愛を交わして、眠りについた。
眠る前に整えてやった寝間着は、暑さのせいか襟元が大きくはだけて、色白の首筋が露わになっている。
白い肌に鮮やかに咲く赤い華は、幸村が昨夜付けたばかりの欲の証だ。
可愛らしい寝顔とは反対に、そこだけ妙に色っぽくて…幸村は見ていられなくなって目を逸らす。
「んっ…ゆき…」
怜は寝苦しいのか、寝言を言いながら大きく身動ぎする。
敷布の上で足を大きく擦り上げたせいで、裾が乱れて脹脛まで露わになった。
(っ…無防備過ぎだろ…しかも、名前っ…呼ぶなよ…寝言って…可愛すぎだろ…)
情事の最中を思わせるような艶めかしい声で名前を呼ばれ、幸村の身体の熱は一気に燃え上がる。
「怜っ…」
幸村は、眠る怜の頬にそっと手を伸ばし、するりと柔らかく撫でた。
「んっ…あっ…」
怜は小さな喘ぎとともに、幸村の手に気持ち良さそうに頬を擦り寄せてくる。
(寝てるけど分かるんだな、気持ちいいのは…)