桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第2章 記憶の中の君に会いたい【冨岡義勇】
「ここです。」
カナヲさんに支えてもらってきたけど久しぶりに動いたため、たかがゆっくり歩いて15分程度の道のりが全力疾走したかのような疲労感。
「あ、ありがとうございます…」
「だ、大丈夫ですか?」
「何とか…」
何とも義勇らしい無機質な家。でも、それすらすごく落ち着く。彼のテリトリーの中に入るだけで安心感に纏われる。
ーーコンコン
「こんにちはー…」
返事はない。
勝手に家の中にあがるのは気が引けた。
庭の方に向かうと縁側でぼんやりと空を眺める彼の姿があった。
その姿にホッとして歩みを進める。
鬼殺隊の柱というだけあってすぐにこちらに気付いて驚いた顔をして立ち上がった。
「な、お前…!何故ここに?1人で来たのか?体は?」
"何故ここに?"
そんなの会いたかったからに決まってる。そしてちゃんとあなたに言いたかった。
「義勇、助けてくれてありがとう。」
「は?あ、ああ、それはもういいから。」
「あと、忘れててごめんね。」
「……は?お、思い、出したのか?」
義勇の姿は記憶が戻ってからは久しぶりに見る。
背はとっくに抜かされて、その姿は男らしい。
だけど顔には面影があるし、私の大好きな幼馴染に間違いなかった。
「うん。ごめんね。今度お礼に鮭大根作るね。」
本当はもう体力がなくて可愛く抱きついたわけではないけど、彼はちゃんと私の体を受け止めてくれた。
「…確かにお前の鮭大根は美味かった…気がする。」
「ちょっと…忘れないでよ。今度思い出させてあげるから。あ…!そうだ、これ!しのぶさんから預かったの!」
忘れていたが、名目上はこの手紙を彼に渡すことが目的なのだ。
しかし、それを開けた瞬間、青い顔をして慌てて私を抱き上げるとわずか数分で蝶屋敷に戻されることになった。
──冨岡さんへ
治療の一環で貴方の家を教えましたが、夕方までに戻って来なければ二度と会わせません。
しかし、間に合えば退院後は貴方が面倒見てあげたらどうですか?
胡蝶しのぶ ──