桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第13章 君との合図【トラファルガー・ロー】
雨はどんどん強くなるばかりだが、彼女の涙もどんどん溢れてくるのに顔は真っ赤に染まり目尻は下がり口角は上がっていた。
こんな簡素な言葉しか持ち合わせていないのに本当に幸せそうな顔をして笑う彼女が愛しくてたまらない。
「先生が…だいすきです…!」
何度も何度も紡ぎ出される愛の言葉をやっと素直に受け入れた自分の心は何やら擽ったい。それでも彼女の体をもう離すまいと抱きしめ続けた。
***
真っ赤だった顔が羞恥に染まった赤だけではないことに気付いたのはその後すぐだった。
高熱に侵されていることに気づくと、慌てて彼女を抱き上げて、自分の家に向かい体を温めてやるとスヤスヤと寝てしまった。
母親に連絡するとテッペンを超えていたが起きて待っていたので事情を説明して一晩家に泊まらせて翌朝家に送って行った。
いつも部屋で抱いた後、家に送る瞬間ほど虚しいものはなかった。
教師として何ということをしているのだという自責の念とこの関係に終わりを告げたいと言う自分の欲望。
セフレにしたいわけじゃなかった。ちゃんとアイツを愛したかった。
だからこの日は晴れ晴れとした気分だった。セックスなどしていないのに初めて想いが通じ合ったことで心が満たされていたから。
オレたちが連絡先を交換して、家と教務主任室以外で会うことになるのはそれから2ヶ月後。
アイツが卒業して、桜が舞い散る綺麗な時期だった。
隣を歩くアイツは少しだけ大人っぽくなった。
そしてもう教師と生徒ではない。誰にも後ろ指を差されるようなことはない。
「ローさん!だいすきです!」
FIN