桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第11章 涙の意味【トラファルガー・ロー】
「…お前のがいつもオレのことを待っててくれているだろうが。たまには待たせろ。お前のことならいつまでだって待っててやる。」
「…ええ、もう…これ以上、泣かせないでぇ…」
「だからここまで迎えに来たんだ。オレだって早く会いたかった。ここなら仕事終わりのお前にすぐ会えるからな。」
"まさか泣いて出てくるとは思わなかったがな"
と苦笑しているローに人目も憚らずに抱きつくが、彼はそんな私を受け止めてくれた。
ローの腕の中は温かくて、トクンと聴こえる胸の音と共に彼に身を委ねるとその日にあった出来事が自分の涙と共に洗い流されていくようだった。
「もう泣き止め。あとで"啼かされる"体力を残しておけよ。」
「んなっ!え?!」
HPがフルパワーまでチャージされるが突然現実に引き戻されると、デートのためにバッチリしたメイクは物の無残に剥がれ落ちてしまっていることに愕然とした。
それでも"そのままでいい"という彼に手を引かれ、予定通り高級ディナーに連れてもらうと、宣言通り夜には声が枯れるまで啼かされることになった。
何でこんな日に仕事なのだと不貞腐れていたのに彼の一挙一動で手のひら返しのようにころりと変わる自分の感情には呆れてしまう。
"こんな日に何で仕事なのだ"
会える時間は少ないが、その中で彼が私のことを考えてくれていると知れた最高の1日になったのは今日が仕事だったからだ。
そう考えるとたまにはこういう誕生日も悪くないと思えた。
しかし、幸せの1日から一転、翌日会社の前でイケメンの彼氏と熱い抱擁をしていた事実が会社中に知れ渡り暫くの間、社内で揶揄われる羽目になったのは言うまでもない。
FIN