桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第10章 アホの集合体【トラファルガー・ロー】
「はい。国立コラソン高度医療センター医事課でございます。」
私は日本の最後の砦と言われるトップの病院で勤務して5年目の医療事務。
コールしたら2コール以内に電話を取る。
これは医事課のルール。
ここに電話を掛けてくる人は当院での予約方法や診療科の質問等様々だ。
"患者様に寄り添い丁寧に笑顔の声"笑声"で対応"
医事課にはそうスローガンが掲げてある。
どんなに辛辣な言葉にも愚痴でも患者様の立場にたって相手の痛みや不安に寄り添うように対応するのがルール。
だけど、特殊な電話がかかってくることもあるのだと身をもって体験することになろうとは思わなかった。
「……?(…あれ?)…こんにちは。こちら国立コラソン高度医療センターでございます。」
「………。」
マニュアル通りに2コール以内に取った電話はいくらこちらが名乗っても返事をしてくれない。二度目の自己紹介も何のその全く声を発する気配のないその電話に受話器を離して通話になっているか一度確認するが、間違いなく通話中の緑のランプが点滅していた。
「……お声が遠いようですのでもう一度お願いできますでしょうか?」
話したかどうかは分からない。だが、とにかくこちらが下手に出るのがベターではあるだろう。
「…っ、はぁ、はぁ、…はぁ、」
途端にか細く聞こえてきたのは呼吸。
それもかなり苦しそうな声だとただの医療事務でもただ事では無いと瞬時に感じた。
「あ、あの…!大丈夫ですか?!呼吸が苦しいのですか?このまま救急診療部にお繋ぎしましょうか?」
「…はぁ、はぁ…だ、いじょう、ぶです…」
「ええ?!で、でも…」
「あの…ぱ、……」
「ぱ…?(…ぱ?パルスオキシメーターのこと?)あ、サチュレーションですか?」
「ぱ、んつ、のいろ…なにいろ?」
「ぱんつ…?は…?ぱ、パンツ?!」
思わず大きい声を出して立ち上がったことで周りにいた医事課の先輩やDr.がビックリしてこちらを見ている。
居た堪れなくなり、受話器に向き合うと"申し訳ありません、お答えできません。"と電話を切った。未だにこちらに注目されていることにどうしたらいいのかわからずに縮こまることしかできなかった。