桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第24章 桜舞い散る君想ふ【宇髄天元】※
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澄み渡る青空を見ると感傷的になる。
アイツはのことを思い出すから。
儚く散った嫁にしたかった彼女のことを。
何故か前世の記憶が残った状態でこの世に再び生を受けたオレが探しているのはアイツ。
奇しくも23年間未だ会うことは叶わない。
適当な恋愛をして適当に過ごしてきたオレだけど、頭の中にいるのはずっとだ。
「宇髄!明日、新年を迎える前にみんなで花見に行こうと話しているのだがどうだろうか?」
煉獄からそう声をかけられたのは昨日のこと。
コイツもコイツで前世で会っているというのに記憶はない。
俺だけ前世に取り残されているような感覚になるが、そんなことは仕方ないこと。
その誘いに乗ると翌日、同僚たちと学校の近辺の桜並木に花見に来た。
「…おいおい、食いもんありすぎだろ?」
「なに、これだけ大人がいれば食べるだろう?」
「多すぎだわ!!」
自分で持ってきたであろう菓子やらおにぎりやらに加えて出店であれもこれもと買い込む煉獄に苦言を呈するがどこ吹く風。
今日は綺麗な空の割に、ビュンビュン吹く風で桜がひらひらと舞っている。
「これだと桜がだいぶ散ってしまうな!今日花見に来て良かった!」
「あー…それはそうだな。来週だともう葉桜だろうな。」
場所を確保してくれているという不死川と胡蝶が待つ場所に向かっていると、桜の下で一人佇む女が目に飛び込んできた。
ふわっと靡く黒髪は艶やかで白く細い肢体を際立たせる。桜が舞い散るその場所で見たそいつがこちらを振り向いた瞬間、オレの心臓は軽く止まった。
なぁ、笑ってもいいぜ。
お前に運命を感じたオレを。
でも、姿を見た瞬間、もう二度と失いたくないと体が震えた。
次は絶対に守ると決めていたのだから。
「っ、!!!」
覚えていないかもしれない。
煉獄だって記憶はない。
不死川だって、胡蝶だって記憶はない。
それでももう無理だ。
123年待ち続けた。
この瞬間を。
もう一度この手にお前を抱きたい。
ちゃんとお前の口から聞きたい。
オレの名を呼ぶ声を。
オレを愛してると。