桜舞い散る君想ふ【ONE PIECE/鬼滅の刃等短編集】
第19章 日傘の贈り物【宇髄天元】※完結しました。10/19
「あっつーい…」
毎日毎日茹だるような暑さにうんざりしてもまだ夏は始まったばかり。
朝の通勤時間帯は電車の中だけでなく、駅に行く道までもが人の多いこと。
それはいつものことだし、仕方ない。
しかし、今日の一番の問題はそれではない。
自分の持ち物にある。
いつも手に持っているアレがない。ないと言うか忘れた。家に完全に置いてきてしまったのだ。
「…日傘無いだけでこんな変わるんだ…」
そう、日傘だ。
いつも日傘をしているのは暑さ対策というよりは紫外線対策の私。
日焼け止めも勿論バッチリだけど、更なる紫外線対策のために日傘は必須アイテムだった。
それなのに、今日は少し寝坊をしてしまっていつもより遅く家を出たが為によりにもよってこの灼熱地獄を味わう羽目になったのだ。
額の汗が頬を伝い、顎から垂れてくるとそれを手の甲で拭うが、後から後から溢れてくるためイタチごっこだ。
すると、駅までもう少しという距離で赤信号に足止めを食らうことになった。
この炎天下の中、日傘なしで立ち往生するのは冗談ではなく、本当に死にそうだ。
帽子もない中でジリジリと焼け付く直射日光が容赦なく私を照りつける。
いつの間にか暑いはずなのに、汗がひいている自分におかしいな?と思ったのも束の間、目の前に大きな人の背中が目に入った。
いつの間にそこに居たのだろうか?
見上げるほど大きなその人のおかげで自分が立っているところは少し日陰ができていて久々に"涼"を感じることができた。
信号が青に変わるまでの間、オアシスを堪能させてもらったが、一生赤信号の信号などない。無情にも赤になってしまった其れにため息を吐きながら、前に出ようと足を出す。
「おい、あんた。」
踏み出した一歩でその大きな人の隣に並ぶと隣から突然、声をかけられた。
ふとその人を見れば、背の高い普通のイケメンがそこに居た。