第19章 好きって言って/伊武深司
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次の日、神尾の言うようにの俺に対する態度は違っていた。
「お疲れ様です!伊武先輩今日も頑張りましょうね!」
「あ、あぁ。頑張ろ。」
「伊武先輩、喉乾きましたよね!水分補給してください!」
「ありがと。」
「タオルです!汗拭いてください!」
「…ありがと。」
と、こんな風にあからさまに話しかけてくれるようになった。
避けられてた頃と比べたら今の方がやりやすいけど、疲れないのかなとも思う。
無理してないといいけど。
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自分の部屋で寛ぎながら、ふとカレンダーに目をやると、いつの間にか夏休みが明日へと迫っていた。
音のない部屋に突然着信音が鳴り響き、俺は近くにおいていた携帯電話を手に取った。
電話は神尾からだった。
『深司ー!夏休み、海行こうぜ!』
開口一番ハイテンションで神尾はそう言った。
電話の向こうではしゃいでいる姿が目に浮かぶ。
「なんでわざわざ男二人で海なんて行くんだよ。ていうか、暑いからやだ。」
俺はうっとおしそうに髪をかき揚げてそう言った。
『マネージャーも誘おうぜ!』
「マネージャー?迷惑だろ。」
ていうかまだ入ったばかりの部活の大して仲良くもない先輩に誘われても嬉しくないよな。
『んー、じゃあ橘さんと杏ちゃんも誘うってのはどうだ?』
「どうだろ。まぁ、その2人がいいって言うならいいんじゃない?杏ちゃんが居ればも来やすいだろうし。」
『よし!じゃあ橘さんに相談してみるか!』
神尾はそう言うと、電話を一方的に切った。
「なんなんだよ。はぁ、海…ね。」
めんどくさいと思いつつ、ほんの少し楽しそうだと俺は物思いにふけた。
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夏休み初日。
時計が午前10時を回った頃だった。
神尾から電話がかかってきた。
『昨日橘さんに連絡して誘ってみたらOK貰えたんだよ!杏ちゃんには橘さんから話しておいてくれるって!』
「ふーん。で、いつにするんだよ。」
『今度の日曜はどうだ?』
俺はその言葉に、カレンダーをチラッと見る。
今度の日曜は4日後か。
「まぁ、いいんじゃない?には、明日部活行った時にでも話せばいいか。」
『あー、いや!俺が連絡しといたぜ。来てくれるってさ!』
俺はそれを聞くと少しモヤモヤした。