第16章 男は度胸/向日岳人
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「あれ?お嬢ちゃん。なんや雰囲気大人っぽくなったなぁ?」
次の日の部活中侑士くんが私に突然そう言った。
「え、そうかな?」
「おい侑士!俺のカノジョに手出すなよ!」
背後から岳人の声がする。
「手は出してへんやん…。ところで岳人…。お前、大人になったんか…?」
「あ?何言ってんだよ侑士。」
「俺があげたアレ。使えたんやろ…?」
岳人は合点が行ったようで顔を赤くしてこう言った。
「お、おー!サンキューな!後でなんか奢るぜ!」
「ほな…嬢ちゃんの雰囲気がちょっと変わったんもそのせいやな…?」
侑士くんはそう言って私を見遣った。
「も、もう!2人とも!デリカシー無さすぎだよ!」
はいはいと言いながら練習に戻る侑士くんと、不貞腐れたように口を尖らす岳人を眺めていると、岳人が急に振り返り私だけに分かるようにアイコンタクトを取り、“す・き”と口を動かした。
恋愛は全く初心者の私たちだけど、これから一緒に成長して一緒に幸せになりたいなと思いながら、私も“す・き”と笑って見せた。
Fin.