第15章 言葉はなくとも/亜久津仁
「あぁ…知ってる…」
仁は肩で息をする私の頭を優しく撫で、そっとおでこにキスをした。
「仁は…?」
「何がだ。」
「言ってくれないの…?」
「言わなくても分かるだろーが。」
言葉とは裏腹に優しい声色が私の脳内に響き渡る。
「たまには言って欲しい…んだけどな…」
「俺は言わねぇぞ。お前を愛してるなんてな。」
「!?」
突然の言葉に私は目を丸くして飛び起きる。
「今なんて言ったの!?」
「なんも言ってねぇ。」
「もう1回!」
「ダメだ。」
「私も…愛してる!」
私はそう言うと仁に飛びついてキスをした。
仁は私の肩をグイッと押し体を離した。
「お前…聞こえてるじゃねぇか!」
仁は珍しく顔を真っ赤にして、腑抜けたような顔を手で隠した。
そんな仁を愛おしく思い、私はもう一度ハグをした。
仁は観念したかのように私を受け入れると、ギュッと力強く抱き返した。
ちょっと強面で、ちょっと短気で、でもすごく優しい仁。
私はそんな仁をこれからもずっとずっと大事にしようと心に誓った。
仁も同じ気持ちだといい。
照れ屋な仁は絶対こんなこと口が裂けても言わないだろう。
でも私を抱きしめるこの腕が、私を愛してると伝えてくれる。
言葉なんてなくても、仁の私への思いは痛いほど伝わってくる。
私も返したい。たくさん伝わる分、たくさん返したい。
だから、私は今日もこう言うよ。
「仁。愛してる。ずっと大切にするね♡」
Fin.