第13章 バレンタイン大作戦/丸井ブン太
《夢主side》
まだ少し冷たい風が肌をかすめる2月のこと。
今日は学校中が小さな期待と不安を胸に、ソワソワとしていた。
2月14日。今日はバレンタインデーだ。
私は、マネージャーとして属しているテニス部の部員たちに毎年義理チョコをばらまいていた。
でも今年は少し違った。
数ヶ月前、テニス部の丸井ブン太と付き合うことになり、今日は付き合って初めてのバレンタインデー 。
部員のみんなに義理チョコはもちろん、ブン太にはちょっとだけ色をつけて渡そうかな、と私は心弾ませていた。
全ての授業が終わり、部活を始めようとテニスコートに入る。
みんなに配る義理チョコを紙袋にまとめて入れて部室に置いた。
みんなが来る前にコートのライン上の土埃を掃いたり、ネットに緩みがないかチェックをしたりと働いた。
すると、副部長が険しい顔で入ってきた。
「ご苦労だな、マネージャー」
「お疲れ様です、真田副部長!」
一言挨拶を交わすと、副部長は部室で精神統一を始めた。
その後も私が、掃除や活動の準備をしているとゾロゾロと部員たちが顔を出し始める。
幸村部長や、仁王くんは可愛くラッピングされたチョコレートと思わしき袋をたくさん抱えていた。
「先輩たち、毎年すげぇ貰ってて羨ましいっす…」
と、赤也は肩を落としていた。
私はテニスコートに向かってくる、赤茶色の髪の毛を見つけた。
ジャッカルくんと楽しそうに話しながら、ブン太はテニスコートへとやってきた。
私たちの関係をまだ他の部員たちは知らない。
と言っても、わざわざ報告する形をとっていなかっただけで隠していた訳ではなかった。
私は軽くブン太に手を振ると、また自分の仕事についた。
☆☆☆
「部活始める前に、今日はバレンタインということで、毎年恒例私からみんなにチョコレートを配ります!」
私がそういうと、部員たちは喜んだ。
チョコレートと言っても、“感謝”と書かれた小さなチョコクッキーが1枚入っているだけの簡単なもの。
私は、それを1人ずつに手渡した。
「はい、部長。いつもありがとうございます。」
「あぁ、ありがとう。」
幸村部長は貰い慣れすぎてるからか、貰い方もスマート。
「副部長。いつもありがとうございます。」
「あ、あぁ。」
真田副部長はこういうイベント事には滅法弱いみたい。
