第6章 第五話 復活の葉
「父さんが…!」
エルダの慌てたような声に、彩音の意識は浮上する。
まだ軽く頭痛はするものの、体を起こす事はできた。
「彩音。起きてすぐで申し訳ないけど、歩けるかい?」
焦りを滲ませるエルダの表情を見て、彩音は強く頷いた。
小屋の扉を開けると、スキー板の跡が奥へ奥へと向かっていた。
吹雪は止んではいない。
跡が残っているということは、まだ出ていったばかりだろう、追いつける。
「エルダ、君はここに残るんだ」
「それはいや!」
不二の言葉に、エルダは首を振った。
―――――助けられないで後悔するのは、もう嫌。
「あの時、私が父さんを止めなければ…父さんはこんなに苦しむ事はなかった。…私も、弟を助けられなくて、どんなに悔やんだか」
不二は雪砂を思い出す。
助けられなかった、あの時の事を。
「わかったよ、一緒に行こう。けれど、僕たちから決して離れないで」
コクリと頷いたエルダを見ながら、彩音が待って、と2人を止めた。
どうしたのかと振り返る2人に彩音が口を開く。
「行く事に関して止めはしないよ。でも、これだけは覚えておいて。…家が火事になった時、エルダが止めなかったら、お父さんはそのまま亡くなっていたかもしれない」
ハッとエルダが目を見開く。
「弟さんも、助けに入ったお父さんも亡くなったら、それこそお母さんはどう思うかな?それに弟さんだって…自分のために助けに入ったお父さんが死んでしまったと知れば、天国で悲しむと思う」
助けるなとは言わない、だけど。
火事で弟を助けられなかった事は、フレイのせいでも、ましてやエルダのせいでも、ないのだと。
「だから、2人ともそんなに自分を責めちゃ、駄目だよ」
彩音の言葉に、エルダはありがとうと呟いた。
「モモ!ユキサたちを探して!」
彩音がゴーレムを起動して空へと飛ばす。
そうして3人は、スキー板の跡を辿った。