第1章 プロローグ 導かれし三人
「神田様、どちらへ行かれるのですか?」
「コイツの家はぶっ壊れたからな。とりあえず町に連れて行く」
―――――ユラユラ…。ユラユラ…
(なんだろう…凄く心地良い感覚…)
小さく浮遊感を感じたまま揺られているユキサは、夢心地のままうっすら目を開いた。
すると目の前には、真っ黒で長い髪。
スルリ、と滑らかな感触を手で感じていると、神田がユキサの方へ向いた。
神田の青い瞳に、ユキサの赤い瞳が映り込んでいる。
「髪も、目も…、お花も…とっても…綺麗、ね……」
ふわり…と微笑むユキサの言葉に神田は立ち止まり、ただユキサを見つめていた。
「神田様?」
「…町についたら本部へ戻る」
「え!?でもユキサ様はまだ…」
―――――私も、あなたのように、エクソシストとして…。
少女から紡がれた言葉は、エクソシストとしてAKUMAと戦う事を選ぶものだった。
神田はユキサをスッ…と肩から下ろし、片手で横向きに抱き直す。
(…軽いな)
こんな小さい体でエクソシストになる、と。
封印したであろう自分の過去の記憶を、神田は少しだけ思い出していた。
「そうですか…」
町に戻った神田とナギサは、話を聞いた村の1人と再び会い、事情を説明した。
AKUMAによってユキサの家は破壊されてしまった事、ユキサの力はAKUMAを倒すためのものである事、よって教団に連れていきエクソシストになってもらう事を。
一通り話を聞いた村人は、覚悟をしていたかのように頷く。
元々ユキサの力を見ていたのだ。
特別なものだという事は既に分かっていたのだろう。
「どうか。…どうか、この子をよろしくお願いします」
神田に抱かれているユキサの頬を優しく触れる。
神田は、村の人たちに話を聞いていた際、誰も彼もユキサの身を案じている人ばかりだったのを思い出す。
愛されて育ったのだろう、そんな少女が特別な力を持ち、戦いに身を置かなくてはならなくなった。
「…ユキサは遠くに行くのか」
ふと、後ろの方から声がした。