第1章 プロローグ 導かれし三人
「イノセンス、発動!!」
「ユキサ様はこちらへ…」
「ちょっと待って下さい。…私は戦えます」
ナギサに手を引かれそうになり、ユキサはグッと足に力を入れた。
そんなユキサにナギサは小さく首を振る。
「ユキサ様も戦える事は承知の上ですが、先程戦ったばかりですし、ここは神田様にお任せしましょう」
「……」
「神田様も見ての通り戦えます。…エクソシストですから」
ニコリと微笑んだナギサに、ユキサは神田へ視線を向けた。
素早い動きで複数のAKUMAを斬り刻んでいく。
と…。
“ミィツケタァ~…”
「はっ!ユキサ様!!」
ふと背後に気配を感じたかと思うと、ユキサは後ろからナギサに抱きしめられた。
神田が舌打ちをして駆け寄ってくるが…。
「…発動。『ショートカット・シールド』」
ボソリ、とユキサの呟きが聞こえたかと思うと、AKUMAの攻撃がナギサの背後で防がれる。
ハッと驚いたナギサが振り向くとそこには透明なシールドが張られていた。
「(これは…!?タリスマンのような…)」
「伏せろ!!」
神田の言葉にバッと身を屈めたユキサ。
抱きしめていたナギサも引きずられるように屈め、その隙に神田がAKUMAへ斬り込む。
斬られたAKUMAは最後の一匹だったようで、そのまま辺りには静寂が包み込んだ。
「ユキサ様…。さっきのは…」
「あの羽と、今のは残りの2つの力…です。これも…イノセンス、な…」
「ユキサ様!?」
フッ…とユキサはそのまま気を失ってしまった。
あたふたするナギサをよそに、神田はユキサを見つめている。
「(さっきの羽やシールドを使った反動か?…あれも、イノセンスなのか)」
考えながら、神田は小さく舌打ちをしてヒョイと片手で肩に担ぎ上げた。
その様子にギョッとしたナギサは慌てて声をかける。
「か、神田様…!ユキサ様なら私が運び…」
「あ?無理だろ」
小さいとはいえ幼児ではないのだ。
普段から背負っている物もある上、女性の力では流石に大変だろう。
足手まといになられても困る、と神田はそのままスタスタと町の方へ歩き出した。
小さく謝罪の言葉を口にしながら、しかし女性にその抱き方はどうなのだろうと思いながら、ナギサは神田に問いかける。