第25章 第二十四話 アレンを追って
神田もその場から動かず、部屋の扉をじっ…と見つめていた。
数分も経たずにその扉が開かれる。
先に出てきたのはユキサだった。
「ユキサ!!」
「彩音?なんでここに」
心配だったからに決まってるでしょと言った彩音に、あぁそう…とユキサはどこかぼーっとしながら答えた。
コムイが一体何をしていたのか聞くが、長官に聞けば分かりますと言ってユキサは歩き出す。
コムイやバクたちが少し慌てたように部屋の中へ入った。
「ちょっとユキサ、どこに…!」
「医務室。点滴取れちゃったから」
あと団服取りに戻らないとと言ってさっさと行ってしまう。
追いかけようとした彩音だが、不二がそれを止めた。
神田がユキサを追いかけていったからだ。
「でも…2人だけで大丈夫かな?だって神田は…」
「いや、神田はおそらく…」
え?と首を傾げた彩音に、不二は少しだけ微笑んだ。
「すみません。点滴が取れたのでもう一度お願いできますか?」
「長官の用事は終わったのかい?分かったよ、こっちへ…」
振り返った医師がピシリと固まった。
ユキサの後ろに、壁に寄りかかりながらこちらを見ている神田がいたからだ。
神田の名前を小さく呟きながら、少し怯えながら点滴の準備をする。
はぁと小さくため息をついたユキサが医師から点滴を施してもらった。
「じゃ、じゃぁ私は用があるから…!」
ユキサへの点滴を終えた医師がゆっくり休んでいくんだよと言って慌てて部屋から出ていった。
体を休めるためにユキサはベッドに横になる。
それからしばらく、2人は口を開かなかった。
しかしこの静かな空間でユキサがウトウトし始めた頃に神田が動き出した。
「…言いたい事が山ほどあるが」
「疲れてるから聞かない」
ぴくりと眉を顰めた神田が、眠そうにしているユキサの顎をぐいと掴んだ。
赤い瞳と青い瞳がぶつかり合う。