第24章 第二十三話 記憶<メモリア>
アレンが悔しげに唇を噛んで俯いた。
そんな様子を見ながら、ユキサは1つ、大きくため息をついた。
「あの。喧嘩してるとこ悪いんだけど、アポ…なんとかっていうのは一体何なの?アレンのこれを止めればいいの?」
これ、とはアレンの歪に発動してるイノセンスの事だ。
そういえばユキサもいたんだったとアレンがバツの悪そうな顔をした。
アレンに近づくユキサに、ハッとしたティキがユキサを止めようとしたが一歩間に合わず…。
ユキサがアレンの左腕に手を添えた。
パアッと一瞬光が輝いたかと思うと、アレンの左腕は普通の状態に戻る。
驚くアレンとティキをよそに、ユキサは深く眉間にシワを寄せた。
「なんか変なものが混じってるんだけど、どうしたのこれは」
えぇと…とかそのー…とか色々誤魔化そうとしてるのだろうアレンはなかなか話そうとしない。
仕方なくちらりとティキを見ると、やれやれと肩をすくめる。
「少年。ユキサはもう話の一端を聞いてるんだし、話してやっていーんでないの」
「う…」
「発動は収まったみたいだけどあいつの気配は消えてねェ。オレがいってくる」
2人へ背を向けたティキが、少年、とアレンを呼んだ。
「本当にエクソシストを貫きたいってんなら戻るな。自分の中の化け物と白黒つけに行け」
―――――今の少年とじゃ、ポーカーしてもつまんなそうだしな。
地を蹴って、ティキがその場を去っていった。
「混乱と争いをバラまいている、か…」
その通りだな、とアレンが夜空を見上げた。
ユキサがその隣に立ちぽつりと呟く。
「アレンだけじゃないよ、私も」
「え…?」
「私も、自分がなんなのか分かんない」
だけど…と言葉を続けようとした所で、意識を失っていたはずのロードの声が2人に届く。
「『立ち止まるな、歩き続けろ』」
ネアがマナに残した言葉だと、ロードが言う。
「ネアは…マナのために戦ったんだ…ナイショ、だけど…ね…」
ふわりと、ロードの体が消えていった。