第3章 第二話 マテールの亡霊
イノセンスを取り戻したアレンは、もう一度ララにイノセンスを与えた。
ララはグゾルに声をかけ、歌を歌い始める。
グゾルはもう、息をしていなかった。
アレンとトマ、そしてユキサを抱えた神田はその場を後にする。
広場を出た所で、彩音が神田へと近づいた。
正確には、ユキサに近づいてきた。
「本当に…雪砂なの?ねぇ…!」
「……なんだ?」
寄ってきた彩音に、神田が訝しげな視線を向ける。
その視線にびくりとした彩音の後ろから、不二もやってきた。
そうしてユキサをバッと奪い取る。
「おい!」
「この子は…僕たちにとって、大切な子なんだ」
え?とアレンも含め、3人は驚いた。
一体どういう事か、そう思った時、そういえば…とアレンが話を切り出した。
「君たちは一体何者なんです?何でこんなところに…」
「……」
沈黙した2人に、アレンは首を傾げた。
「ん…」
ユキサが目を覚ます。
夕日の眩しさに目を細めた。
ここはどこか、と辺りを見回して、そこに黒い髪を見つけた。
「神田さん…」
「目を覚ましたのか」
部屋の隅で座っていた神田が、スッと立ち上がってこちらへ来た。
気分は?と聞かれて大丈夫だと答えるユキサ。
声もはっきり戻っている事に、神田はホッとする。
「起きて早々悪いが、会わせたい奴らがいる」
立てるかと手を差し出されて、ユキサはその手を取った。
ユキサが目覚める前。
アレン、神田、トマは彩音と不二の話を聞いていた。
ここは自分たちが居た世界とは明らかに違う事。
気がついたらここにいて、イノセンスらしき物が発動した事。
そしてユキサが、自分たちの幼馴染みであった事。
イノセンスの適合者であれば、世界を渡ることも可能なのか。
理由は分からないままで、2人の話は到底信じられるものではないのだが、嘘をついている素振りもなく、2人はアテがないのだと言う。
イノセンスが関係しているのもあり、とりあえず2人は教団へ連れて行くことにした。
そんな話を簡単に説明するが、ユキサは首を傾げた。